表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔法学校の方士先生  作者: 均極道人
第五章 呪われた地と学院試合
79/143

第七十七話 再会

場面は再び、リュミエールとガルドの馬車の中。


「そういえば、今回は学院と一緒じゃないんでしょ? じゃあ宿泊先は? よければこっちに来ない?」


リュミエールが軽く誘うように聞くと、ガルドは笑いながら首を振った。


「おいおい、俺はもう卒業生だけど、学院に居場所がないわけじゃないさ。ちゃんと部屋もあるしな。それに、弟もこっちにいるから、今回はそっちに顔出しに行くつもりだ。」


「ふーん、弟くんにね……」


と、リュミエールが納得しかけたとき、ガルドはミリナの方を見て言葉を続けた。


「それと、オレリスには我が家の恩人もいるしな。」


「そうそう、陸先生だよ!」


ミリナが目を輝かせながら食い気味に答える。


「私のことを手取り足取り教えてくれたし、次兄様を弟子にもしてくれたの! 今回は兄さんも直接お礼を言うつもりなんだよ!」


「へえ……その陸先生って、どんな人なの?」


リュミエールの問いかけに、ミリナの目がさらにキラキラと輝き始めた。


「最強ので4級大魔法使い!しかも若い! 優しくて、真面目で、強くて、それでいて――」


一度スイッチが入ったミリナは止まらない。


「授業中だって丁寧で、どんな質問にも答えてくれて、それに……」


「雷魔法はすごく強い!」


「あと、笑った顔がすっごく素敵で――」


「それでいてちょっと抜けてるとこもあるんだけど、それがまた――」


「……あ、あのさ」


最初は「ほうほう」と聞いていたリュミエールも、段々と無表情になっていき、


しまいには目が死んできた。


「もういいわミリナちゃん、その“陸先生”って人がどんだけ完璧超人なのかはよーく分かったから……」


リュミエールは、延々と続くミリナの“陸先生語り”に半分呆れながら、ふと窓の外へと視線を移した。


(……ん?)


城門近くの賑わう通りの中、彼女の視線はある一人の青年に吸い寄せられた。


その青年はフード付きのローブを着ていて、胸元には間違いなく魔法使いギルドの紋章。


しかも――5級の証まで付いている。


(若い……こんな年で魔導士?聞いたことない、そして、隣にエルフ?しかも二人!?)


その光景に、リュミエールは無意識に溜息を漏らした。


「……やっぱり、校長先生と言った通り、男はつよくになると女にだらしないのかしらね……」


軽く眉をひそめながら、こっそりガルドの横顔に目をやる。


(まあ、あの人なら真面目な男……そして陸先生って人も、紳士らしい、いい人はいるよね)


そんなことを思っていた矢先、突然ミリナの声が弾んだ。


「――あっ! 陸先生っ!」


「へ?」


ミリナは窓の外を指差し、ぱっと立ち上がると、嬉しそうに馬車から降りて駆けていった。


「陸先生ーっ! お久しぶりですーっ!」


ぽかんとその背中を見送るリュミエール。


自分の中で作り上げていた“完璧な紳士像”とのギャップに頭がついていかず、


「えっ……今のが……? いや、でも……え? 大魔法使いじゃなくて魔導士?オレリスの先生なぜ魔法使いギルドに所属?あんな色男で真剣?本当にあれがミリナが言ってた陸先生……?」


と、目の前で起こる現実を受け止めきれずに、しばらく口を開けて呆然としていたのだった。


ガルドは微笑みながらリュミエールに振り返った。


「じゃあ、俺はこの辺で。試合のときは応援しに行くから、頑張れよ。」


「……うん。」


リュミエールは小さくうなずき、顔を伏せた。その頬には、わずかに朱が差している。


一方その頃――


陸虚は、アラセリアの肩に軽く手を当てながら、封印符を再調整していた。


「この前の旅で少し緩んだみたいだな。ほら、これでまたしばらくは大丈夫だ。」


「さすがダーリン♪」


その時、前方から元気な声が聞こえた。


「陸先生ーっ!」


「ん?」


駆け寄ってくるのは、金髪の少女――ミリナだ。


陸虚はニヤリと笑いながら冗談めかして言った。


「おやおや、これはミリナじゃないか。また家出か?」


「ち、違いますっ! 今回はお兄ちゃんが連れてきてくれたんです!」


「へえ、お兄ちゃん?もしかしてリセルの兄貴?」


正装のような衣装を身にまとった堂々たる青年が、ゆっくりと歩み寄ってくる。


その顔立ちはどこかリセルに似ていた。


彼は陸虚の前で丁寧に一礼する。


「ミリナとリセルの兄、ガルド・フレアヴルトと申します。弟と妹が、あなたに大変お世話になっていると聞きまして……本日は、直接お礼を申し上げに参りました。」


こんなにも頼れる兄貴分がいてくれるなんて——陸虚はふと、心からの笑みをこぼした。


「そんなに堅くならなくていいよ、ガルドさん。せっかくだから、今夜うちにでも来ない? リセルにも声をかけて、シフ教頭も呼ぼう。叔父さんと久しぶりに会えるだろ?」


「――叔父さん……!」


ガルドは一瞬、遠い記憶に思いを馳せた。


「そういえば、俺が北方の学院に行ってから、シフ叔父さんとは会ってないな……。すごく、会いたかったんです。……ありがとうございます、陸先生。」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ