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魔法学校の方士先生  作者: 均極道人
第五章 呪われた地と学院試合
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番外 ノアと一日デート(王都行く前に)

一日の授業が終わり、陸虚ーは軽く伸びをして、少し疲れた表情で自宅へ戻ってきた。


扉を開けた瞬間、ちょうどノアが小さな袋を持って出かけようとしているところだった。


「おや、どこに行くんだ?」


「えっ、旦、旦那様!あの、ちょっと買い物に……!」


ノアはびくっと肩を震わせ、まるで悪いことをしている子供のように袋を背中に隠した。


「ふーん、ちょうど暇だし、僕も一緒に行こうかな。」


陸虚が軽い口調でそう言うと、ノアの目がぱっと輝き、頬がほんのり赤く染まった。


「え、えっと……いいよ!じゃあ、行こっ!」


二人で並んで歩き出し、街の雑踏へと向かう。


平民街の市場は夜になってもにぎわいを見せ、屋台の灯りがきらきらと揺れ、焼き物やスパイスの香りが漂っていた。


「おやおや、ノアちゃん、旦那様と一緒にお散歩かい?」


「ち、ちがいますっ!旦那様ですけどそっちの旦那様じゃないですから!」


露店の飴屋のおばちゃんがにやにやと笑いながら声をかけ、ノアは顔を真っ赤にしてぶんぶん手を振った。


陸虚はそんなやり取りを横目で見ながら、思わず小さく笑みを漏らした。


しばらく歩くと、ノアが足を止めて手を振る。


「ノア、久しぶりじゃん!」


洗濯屋の店先から出てきたのは、ノアの知り合いの少女だ。少し疲れた笑みを浮かべながら、ノアと楽しそうにおしゃべりを始めた。


「はぁ……今日、一件もお客さん来なかったよ。全然ダメだぁ。」


少女がため息をつくと、陸虚は自分のローブを見下ろし、ふと思い立って脱ぎ、彼女に差し出した。


「ちょうどいい。この服、ちょっと汚れてるし、洗ってくれないか?」


「え、えっ!?そ、それって、オレリスの先生の……!?」


店主がカウンターの奥から飛び出してきて、目をまん丸に見開いた。


「ま、マジか!?先生がうちの店で洗濯!?そりゃもう宣伝効果バツグンじゃないか!オレリスの先生御用達って看板出したら、お客さん殺到間違いなしだぞ!給料も弾むぞ!!」


少女の顔を真っ赤にしながらも、しどろもどろにお礼を言った。


「せ、先生……ありがとうございます……!」


ノアも小さな声で「先生、ほんと急に……」と呟き、ちらりと陸虚を見上げた。


陸虚は気づかぬふりで微笑みながら、夜のにぎわう市場を見渡した。


陸虚が教師のローブを脱ぐと、その下から現れたのは魔法使いの服装だった。


胸元には、4級大魔法使いのことを示す徽章が輝いている。


周囲を歩く人々の目が、少しずつ変わっていくのがわかった。


なんとなく距離を置くような、そして、どこか敬意の混じった視線――。


「……うん……?」


陸虚はそんな雰囲気を見気づいて、徽章を外してポケットにしまい込んだ。


「よし、帰って荷物置いたら、着替えて今日は外でご飯をしましょう!」


「は、はい!」


ノアは目をぱちくりさせたが、すぐに小さな笑みを浮かべた。


平民街に戻り、陸虚はラフな服装に着替えてから、ふとノアに尋ねた。


「ノア、この辺で何か美味しいものはあるか?」


「えっと……」


ノアは少し考え込んでから、ぱっと顔を上げた。


「前に仕事をしてたお店のシュニッツェルが有名だよ!衣がサクサクで、お肉がジューシーで……!」


「そうか、それなら行ってみようか。」


「うん!」


ノアは嬉しそうに頷き、二人で賑やかな通りを抜けて、その小さな食堂へと向かった。


店に入ると、厨房の奥から顔を出したのは、ふくよかで愛想のいい女性。


「おやおや、ノアじゃない!久しぶりじゃないの!最近はどう?元気にしてた?」


「うん、なんとかやってるよ!」


ノアが照れたように笑うと、女性の目がふと陸虚に移った。


「……今日はお友達と一緒?」


陸虚は自然な笑顔を浮かべ、ノアの肩越しに答えた。


「そうです。ノアに勧められて来ました。ここのシュニッツェルが美味しいって聞いて。」


「ふふん、間違いないわよ!ウチのシュニッツェルは絶対にあなたを満足させるから、楽しみにしてて!」


女性は胸を張って笑い、厨房に向かって大きな声で注文を通した。


料理が運ばれてくると、テーブルの上には黄金色に輝くシュニッツェルが香ばしい香りを漂わせていた。


そして、その横には泡立つ麦酒が二杯、どんと置かれた。


「これはサービスだよ、遠慮しないで!」


そう言って笑う店主の奥さんに、陸虚は少し恐縮したように手を振った。


「いや、そんな……いただいてしまっては。」


「いいのいいの!」


奥さんは手を振って笑い飛ばしながら、ノアに目を向けた。


「ノアちゃん、この子はうちで何年も頑張ってくれたんだよ。真面目で一生懸命でねぇ……辞めた日なんて、みんな寂しがっちゃってさ。でもね、最近は街の噂で聞いたんだよ、いい仕事見つけたって。それなら安心だって思ってたとこさ。」


ノアは顔を赤らめ、そっと笑った。


「前の仕事も……それなりに楽しかったんだよ。」


そう呟いた後、ふいに顔を上げ、慌てて言い直した。


「い、いえ!旦那様のメイドの仕事の方がよりよいです!私、旦那様の側にいられる方が好きですから!」


陸虚が驚いたようにノアを見ると、ノアもハッと気づき、二人は一瞬目を合わせた。


――その瞬間、ふと二人の脳裏に、あの夜の出来事がよぎった。


思わず視線をそらし、二人同時に目の前のシュニッツェルに集中し始めた。


フォークとナイフの音が、やけに大きく響いているように感じられた。


「……いただきます。」


「いただきます。」


ノアの耳はほんのり赤く染まり、陸虚も少し照れくさそうに、そっと笑みをこぼした

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