表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔法学校の方士先生  作者: 均極道人
第五章 呪われた地と学院試合
71/143

第七十話 意外

観客席――その誰もが、言葉を失っていた。


「……え、これ……マジ?」


「ちょ、ちょっと待て……大王、やられた?」


「嘘だろ!? あの化け物が人間ごときに……!?」


「……いや、待って……あれ……なんかおかしくないか?」


誰かが、ぽつりと呟く。


「大王……なんか、殴られてるのに、すっごく嬉しそうな顔してねぇ……?」


その瞬間、空気が変わった。


陸虚も違和感に気づく。


(……ん?)


目の前の闇エルフは、最初こそ防御姿勢を取っていた。


だが――


今はもう、完全に無防備。むしろ自ら拳を受けにきている。


しかも――


「……んっ♡」


「っ!?」


――妙な声が漏れた。


(……おい)


雷光の拳を止めた陸虚は、数歩あとずさる。


怒りが、冷めた。


「……なんだお前。もしかして……」


闇エルフは、頬を紅潮させながらうっとりと笑う。


「ダーリン、もっと、殴って……♡」


「――こっちはな、真剣に怒ってたんだぞ……!」


「こんな風に殴られたの、初めて……最高……♡」


頭を抱えながら、陸虚はそのまま女を首根っこ掴んで引きずり、縛られたエルフ少年のもとへ向かう。


「……最初からこうすればよかった」


小エルフの縄を解き、口の布を外す。


「は、はいっ……! あの、ありがとうございます……って、え!? ちょ、待って! 誤解です誤解!」


「誤解?」


「その、大王はちょっと……いや、だいぶ変態なとこありますけど」


「でも僕にはすっごく優しくしてくれましたし! ほんとはこんなことする人じゃ……」


「……」


視線を感じてふと横を見ると――


雷でボロボロになったはずの大王が、目にハート浮かべてこちらを見つめていた。


陸虚は思わず、眼鏡の奥で目を覆った。


「じゃあ……僕が来なかったら、どうなってたんだよ」


「え? ああ、そしたら大王が“じゃあ今回は見逃してやる”って言って、別の方法で貴方を誘き寄せようとしてたと思います!」


「…………」


「……つまり、全部計算通りだったんですね」


「……うん、もういい。僕の負けだわ」





変異者たちの本拠地――王宮。


……と言っても、その実態は壁は崩れ、天井は穴だらけ、家具は壊れかけのまさに“廃墟”。


その中央にある唯一マシな玉座の前で、陸虚は警戒心MAXで立っていた。


「……で。今回も“あの時の結晶”みたいなモノを探してんのか?」


「ふふっ、やっぱバレてた~?」


玉座の上、片足を抱えて座るのは――アラセリア・ノクシス。この都市の王、そして変異者たちの頂点に立つ存在。


「そうよ~。この前あなたが譲れた紫色の結晶、あれね? あれの魔力がすごくてねぇ、つい昇っちゃったの♡」


「……“昇った”って……」


「しかもまた来てくれたの、今度は一緒に行ってくれるのね? きゃー嬉しい♡」


「いや、話聞け。お前……」


「お前で言うなよ、私は名前がいるんよ “アラセリア”って呼んで? もしくは“ハ~二”でもいいわよ?」


「呼ばん。絶対に呼ばん」


(なんなんだこの女……)


陸虚は額を押さえながら、ぐっと堪える。


「本題に戻るぞ。――“法則干渉系の素材”、それがこの地の奥にあるって話……本当なのか?」


アラセリアはふわりと玉座から立ち上がり、腰に手を当てながらいかにも芝居がかった動きで言う。


「うんっ♡ 見つけたわよ~。だから、すぐにダーリンを迎えに行ったのに……」


「そしたらあなたったら、私のことあんなにボッコボコに殴って!」


「ううっ……ひどい……ひどいわ……♡」


「殴られながら興奮してた奴が何言ってんだよ……」


「で? 場所はどこなんだ?」


「ふふっ♡ 教えな~い」


「は?」


「一緒に来てくれるなら、案内してあげてもいいけど~? うふふ、どうする~?」


バンッ!


陸虚は椅子から立ち上がる。


「……じゃあ、いい」


「えっ!? ええっ!? えぇぇぇぇえええぇっ!?」


アラセリアの裏返った声が、廃墟に響いた。


「……先生」


ふと、横にいたエルフの少年が声を上げた。


「先生、大王と一緒に行ってあげてください」


陸虚は振り返る。


「……は?」


「前回、先生が譲れた紫の結晶……あれのおかげで大王は力を得て、ようやくこの地を守れるようになったんです」


「でも――倒したわけじゃない。あれは、“追い払った”だけです」


「今も、“それ”は呪われた地の奥で、さらに深い汚染を蓄えながら膨れ上がっています」


「今のままでは、この都市は……きっと守れません」


「……ふん。そんなの、僕に関係ない」


思わずそう言いかけて、陸虚は言葉を止めた。


――ふと、脳裏に浮かぶ。


グラディルと木彫りの鹿。


そして、この都市で出会った様々な“変異者”たちの暮らしと命。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ