表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔法学校の方士先生  作者: 均極道人
第四章 ドワーフの村
60/143

第五十九話 潜入

祭り当日。


陸虚は最初の一回戦だけ“形だけ”参加し、あっさり敗退。


「……まあ、こうなるよな」


とりあえず会場の隅に座ってビールを飲みながら、勝ち進む猛者たちを眺めていた。


やがて会場が歓声で最高潮に達したタイミング――


「ちょっと……トイレ!」


そう言い残し、陸虚は人混みを抜けてさっと広場を離れた。





そのまま裏手の山道を進み、南門を抜けて火山地帯へ――


肩にティアリア(鳥)を乗せ、首からドワーフの“気配遮蔽の護符”を下げながら、溶岩の熱気に満ちた洞窟へと入っていく。


「時間がない、急ごう。試合が終わる前に戻るぞ」


「了解、全力で探す」


二人は周囲の気配を探るために魔力感知を最大限に開き、奥へと進んでいった。


そして――


それは、火山の内部にある赤黒い“火湖”のほとりだった。


「……あれ、あれじゃない?」


ティアリアが一本の奇妙な植物を見つけて指し示した。


赤くねじれた根、燃えるような葉――


「千年火参……間違いない。しかも状態も最高級だ」


陸虚が喜びに顔をほころばせた、そのとき。


「……で、食うとどんな味だ?」


「ん? 苦い……けど、……え、ティアリア、君食べたいの?」


「……いや、私じゃない。今の、私じゃないよ?」


「え?」


二人が同時に振り返ると――


そこにいたのは、真紅の鱗に覆われた、巨大な龍だった。


その双眸が、まっすぐこちらを見下ろしていた。


「……っ!!」


(……6級!? いや、間違いない、この気配……!)


完全に固まった陸虚の隣で、ティアリアがピクリと動いた。


「……その気配、懐かしいな。ティリオンと関係あるか?」


紅龍がティアリアに問いかける。


「ティリオンは……私の父です」


「ほう……あいつか。昔、ちょっと遊んでもらったことがあってな。果実、よくくれた」


紅龍が懐かしそうに目を細めたあと――今度は陸虚に目を向けた。


「……君の気配、すごく心地いい。側にいてもいいか?」


「……へ?」


「いや、別に……ダメってわけじゃないけど、今の姿のままだとちょっと……いろんな意味で目立つかも……」


そう言うと、紅龍はふふっと笑い――


次の瞬間、その身体が淡い炎に包まれ、みるみるうちに人型へと変化していく。


現れたのは、燃えるような赤髪と龍角を持つ、スラリとした美女――


「これなら、大丈夫?」


「………………」


火参を手に入れたあと、陸虚は肩のティアリアを撫でながら、紅龍に向かって口を開いた。


「……改めて自己紹介しておくよ。僕は陸虚です、こちらはティアリアです。」


紅龍は一礼すると、柔らかな微笑みを浮かべた。


妾身わらわの名はヴァルゼリナ。火の属性が満ちるこの火山で、長らく眠っておった」


「……ここに?」


「うむ。妾身はこの大地に満ちる濃密な火属性の魔力に惹かれ、気づけば長き眠りに……そして、そなたの気配を感じ、目覚めたのじゃ」


「えっ、じゃあ……僕のせいで起きた感じ?」


「妾身が必要とする“熱”を、そなたは纏っておる。だから、ついていくことに異存はない」


「……なるほど…..」


こうして、三人………じゃなくて、一人と一羽と一龍は、火山地帯を無事に後にした。


祭り会場へ戻ると、あたりは再び大盛り上がり。


「うおおおおっ! いけーっ、トーマ!!」


中心のテーブルでは、トーマが筋骨隆々なドワーフの男と腕相撲を繰り広げていた。


「はっはっ、飲んでからのほうが調子出るなぁ!」


レイリアが陸虚の姿に気づき、すぐに駆け寄ってきた。


「リクくん、どこ行ってたのよ!? トーマ、この調子でベスト4入りだよ!? 飲んだら意外と強いんだから!」


「あいつ……笑わせながら、こっそり力入れてる……あれ反則ギリギリじゃね?」


だがそのとき、レイリアの視線が陸虚の後ろに向けられた。


「……で、そっちの超美人さんは?」


「え、いやこれは――」


説明しようとした、そのとき――


――ゴゴゴゴゴゴゴッ!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ