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魔法学校の方士先生  作者: 均極道人
第四章 ドワーフの村
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第五十四話 ドワーフの情報

商隊はついに、ライフタリンを出発した。


馬車が連なり、ゆったりとした速度で街道を進んでいく。旅の始まりとしては、上々の滑り出しだった。

その中、陸虚はこっそりと――だが確実に、自分の快適空間を確保していた。


「隊長、この“驅虫スクロール”、一枚でいいんで……できれば馬車のスペース、少しだけ分けてもらえませんか?」


そう言って差し出された符を見た隊長の目が、一瞬で変わる。


「おおっ……こりゃありがてぇ……!」


隊長の馬車の座席に落ち着いた陸虚に、隊長が嬉しそうに語りかける。


「いやいや、君、気を遣いすぎだって! でも正直なところ……これがあると本当に助かる。野営中に虫がいないだけで、どれだけ寝つきが違うか……!」


「はは、それなら良かったです。道中でもちょこちょこ描いて、みんなに配れるようにしておきますよ。」


「マジで!? それ、助かるなぁ!」


すっかり上機嫌になった隊長は、豪快に笑ってから拳を軽く握った。


「いや~、君みたいな若者が来てくれて助かるよ。こういう気配りができる奴、少ないからな。ありがとな!」


「いえいえ、僕も色々と教えてもらいたくて。……そういえば、ドワーフの部族ってどんなところなんですか?」


「ドワーフか。あいつらはな、一度関係築けたらめちゃくちゃ義理堅いぞ。」


「恨みさえ買ってなけりゃ、どこ行っても歓迎される。しかも今の時期なら、ちょうどお祭りシーズンに入ってるはずだ。」


「祭り……ですか?」


「ああ、美酒、美食、もう飲み放題食べ放題ってやつだな!」


隊長は嬉しそうに両手を広げて語り出す。


「運が良ければ、あの女族長様が自ら鍛えた品を、祭りの“腕相撲大会”の優勝者に授けてくれるらしい。」


「腕相撲大会……!? 僕らも参加できるんですか?」


「もちろん! ただし、魔法の使用は禁止! 完全に肉体勝負だ!」


「俺も去年出たんだぜ? 結果は……六位!」


そう言って隊長は自慢げにニッと笑い、荷物の中から一本の匕首を取り出した。


「これがその時の賞品だ。“黒鉄の牙”って呼ばれてるやつでな。見ろ、この黒光り……!」


漆黒に光る刃が、日差しを受けて鈍く輝く。その匕首を陸虚に見せながら、隊長は腕をぐっと曲げ、さりげなく鍛えられた上腕二頭筋を見せつけた。


「まあ、君みたいな細身の子にはちと厳しいかもな? はっはっは!」


隊長の話を聞きながら、陸虚はふと心の中で思った。


(……あれ? なんか、思ってたより穏やかな旅かもしれないな……)


そんな気がしてきた矢先――


「ま、リクくん、あんまり気負わなくていいぞ。ドワーフたちは、俺らみたいな“普通の連中”には、すごくフレンドリーだからな。」


「……普通の?」


「そう。逆に、あっちの連中が警戒するのは“強い奴”だ。」


「えっ?」


陸虚が一瞬きょとんとする。


隊長は後頭部をポリポリと掻きながら、少しばかり申し訳なさそうに続けた。


「詳しいことは俺も知らないけどな……向こうの村に入る時、4級以上の大魔法使いたちは全員チェックされるって聞いたぜ。」


「えぇ……」


「それで、“問題なし”って確認されても、あまり長くは滞在させてもらえないらしい。」


「いやいや、それ……強者側は納得するんですか?」


陸虚が思わずそう尋ねると――


「“強者”ねぇ……」


隊長が豪快に笑い出した。


「はははっ! そりゃ、お前――その“強者”とやらをぶん殴れる奴が向こうにいるってことさ!」


「……へ?」


「ドワーフの女族長ってな、5級の奥義魔導士、魔導士レベルの中じゃトップクラスの実力者だ。」


「“最強の5級”って言われてるくらいでな。」


「アカデミア・カラン魔法学院って知ってるか? そこの校長、あれはもう6級の魔導師なんだけどな――」


「数年前、挨拶に行ったらしいんだよ。で、例によって力の波動かなんかで警戒されて――」


「女族長に……」


隊長は拳を握って振りかぶるような仕草をしながら――


「一発、“ゴン”と、門の外まで吹っ飛ばされたらしい!」


「…………っ!」


陸虚の喉がごくりと鳴る。


(なんが嫌な予感が….!?)

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