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魔法学校の方士先生  作者: 均極道人
第四章 ドワーフの村
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第四十九話 手がかり

学院に戻った陸虚は、校長から「戻ったらすぐに来い」とのメッセージを受け取っていた。


「ノア、先に帰ってて。僕は校長のところに寄ってから戻るよ。」


ノアにそう言い残し、陸虚は校長室へと向かった。


部屋に入ると、校長オグドンが書類を手にしながら笑みを向けてきた。


「おう、おかえり。王都では楽しめたか?」


「……いえ、まあ、いろいろありました。結果は悪くなかったですけど、正直ちょっと疲れました。」


「ふむ……それにしても……魔力の波動が変わっているな。……5級まで上がったのか?」


「なっ、なんだと!?4級って聞いてたぞ!?この年齢で魔導士だと!?しかも奥義の波を感じていた、そんなの聞いたことないわ!」


 あまりにも背が低いため、今まで陸虚はその存在にすら気づいていなかった。突然立ち上がった老人に驚かされた。


「はは、驚くのも無理はない。この方は私の旧友であり、アカデミア・カラン魔法学院の校長、そして『熔炉(ようろ)』の名を持つドワーフの名鍛冶師、魔導師のカミロさんだ。今回は私達のために、特製の錬丹用の鼎を作りに来てくれた。」


カミロは短く驚いた表情を見せたが、すぐに落ち着きを取り戻し、陸虚の前に歩み寄って肩を軽く叩いた。


「プロトタイプスケッチ、見させてもらったぞ。いやはや、よく考えられてる。あれを描いたやつ、天才だな。」


 「本当に作れるんですか?」

 陸虚が身を乗り出して尋ねる。


 「……さあな。今の時点では断言できんが、挑戦する価値はある。」


 「ただ、この件はまだ研究中でな」


 と校長が口を挟む。


 「だが、お前が言っていた材料のひとつに、手がかりが見えてきた。」


 「本当ですか!?どれですか?」


  陸虚の目が一気に輝いた。


 「……“千年火参”だ。その話はカミロに任せよう。」


  視線がカミロに向く。カミロは腕を組み、少し思い出すように話し始めた。


 「我が部族の領地に、“火山タブーゾーン”って場所がある。若い頃に一度だけ中に入ったことがあるんだが、そこで……お前の言うそれによく似たものを見たことがある。」


「じゃあ、それをどうやって手に入れればいいのか、教えていただけますか?」


「いいとも。その火山は、特別な“ルール”で守られていてな。ドワーフ以外の者は、内部に入れない仕組みになってる。」


「だから、お前のためにドワーフの気配を纏える特製の札を作ってやる。七日後に取りに来い。」


「ただし、ひとつだけ注意しておけ。ドワーフの領地に入る時、お前の“身元”は絶対に明かすな。」


「……えっ?」


警戒心を強めた陸虚が思わず声を上げる。


「ちょ、ちょっと待ってくださいよ。カミロさん、あなたドワーフですよね?なんで僕がこそこそしなきゃいけないんですか?」


カミロは少し目を逸らしながら、咳払いをして言った。


「……まぁ、現族長とちょっとした“いざこざ”があってな。もしあいつにバレたら……お前、吊るされて叩きのめされる羽目になるぞ。」


「……」


陸虚は黙ってその場にしゃがみ込み、顔を両手で覆った。


「なんで、いつもこうなるんだよ……たまには、のんびり安全な旅がしたいんだけど……」


陸虚は、現実を悟ったような目でため息をつきながら言った。


「……わかりました。でも、ちょっと休ませてください。弟子を一人取ったばかりで、彼が自立できるようになるまでは、僕も動けないんです。」


「おうおう、慌てんなって!」


カミロが笑いながら手を振る。


「さっき言いそびれたがな、あの火山は常に活動してて、行けるのは冬だけなんだ。道のりを考えても、まだ時間はあるさ。」


「それに、素材の書まだ全部まとまっていない。念のため、今回はティアリラも連れて行ってもらおう。」


そう言って、校長が静かに補足した。


「えっ!?ティアリラさんって……移動できるんですか?」


驚いた陸虚が声を上げると、校長室の片隅に置かれていた植物の枝がふわりと光り、人型へと姿を変えた。現れたのは、穏やかな雰囲気を纏った青年の姿だった。


「私の精神の半分を分けて、分身として同行することは可能です。ただし、人の姿を保つには膨大な精神力が必要なので……普段は、動物の姿でいることになるでしょう。」


そう言うと、ティアリラは姿を変え、小さな鳥となって陸虚の肩にふわりと降り立った。


「ドワーフの族長は、ティアリラの存在を知らん。同行しても問題はないだろう。」


そう付け加えた校長の言葉に、陸虚は訝しげに眉をひそめた。


「ちょっと待ってください。……それってつまり、校長先生もその族長と“因縁”があるってことですか?」


「う、うん……いや、正確には“因縁”というより……」


校長は目を逸らしつつ咳払いを一つ。


「カミロとわしが仲良すぎるせいで……あいつ、わしのことも一緒に嫌ってるらしい。」


「……」


陸虚の視界が一瞬真っ暗になった気がした。


「マジで今回、帰ってこられない気がしてきたんですが……もし僕が捕まったら、ノアのこと、ちゃんと面倒見てくださいよ……?」

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