第四十八話 奥義と終わり?
その瞬間、地面が震え、
空気がねじれるような圧が全場に満ちた。
「こ、これは……」
「お、おい……魔力が、段違いだぞ……!」
「まさか、お前……!」
陸虚は、ニヤリと笑って。
――ドォォォン!!
その体から迸る雷光が、地を走った。
暗黒の“陰雷龍”が、徐々に銀白へと変貌していく。
その姿は、まるで陽の光を帯びた龍神――
「“陽雷龍”」
ギュオォォォオオオオオ――!!
銀の雷龍が天へと咆哮し、
光と闇の狭間で“奥義の気配”を放ち始めた。
三人の魔導士は、息を呑んだ。
「ま、まさか……」
「……これは、“奥義”の気配……?」
「まさか、また一人――奥義魔導士だと!?」
ザグレウスの目が見開かれた。
「……なんだと……? そんな馬鹿な。こんな若造が……奥義だと……?」
陸虚は、静と思っている。
「……リセルが入った時、金丹がちょうど中期に届いたんだ、あいつが、何をするか分からないからな、隠された良かった。」
ザグレウスと陸虚、シフ――激突寸前の緊張が、空気を張り詰めさせていたその時。
「ザグレウス様ーっ!!」
ひとりの手下が駆け寄り、何かを耳打ちする。ザグレウスは一瞬、眉をひそめたが、
次の瞬間にはスッと魔力を収めていた。
「……撤退する。お前たち、好きにしろ」
陸虚は驚いて一歩前へ出る。
「……なんだよ、急に」
ザグレウスはチラとこちらを振り返り、意味深な笑みを浮かべた。
「――また会うことになるさ。すぐにな」
そして黒蛇の残影を残して、静かにその場を去った。
シフと陸虚が泊まる旅館――
帰還した一行を出迎えたのは、ノアだった。
「……みんな、無事で良かった.....」
その後は賑やかな夕食、温かい笑顔。久々に訪れた穏やかな時間だった。
食後――
陸虚はリセルとカミラに声をかけた。
「お前ら、オレリスに一緒に戻るか?リセルは修行の続きがあるし、カミラの家族ももう公爵家が面倒を見てくれてる」
リセルは即答した。
「もちろん。俺は師匠について行きますよ」
カミラもすかさず笑いながら頷いた。
「あなたが行くなら、どこだってついて行くわ。……二度と離れたくないの」
陸虚は頷きながら言った。
「よし、じゃあ明日出発だ。――」
その日の夜、ザグレウスの馬車がゆっくりと王都の屋敷に戻った。
冷えた空気の中、従者の一人がそっと尋ねる。
「……ザグレウス様、本当にこのまま放っておくのですか?」
ザグレウスは馬車の窓越しに夜空を見上げたまま、口元だけで冷たく笑う。
「じゃあ、どうしろと言うんだ?」
「相手は――奥義魔導士が二人。さらにライフタリンに戻れば、6級の魔導師と、あの“世界樹”までが揃っている」
「――お前が行くか? それとも、俺が行くか?」
従者は青ざめ、思わず口をつぐむ。
「……申し訳ありません」
空気を変えようと、別の話題を持ち出す。
「ですが……まさか、あの“方”が協力してくださるとは思いませんでした」
ザグレウスは鼻で笑った。
「フン、“協力”だと?あいつが来なかったらどうなるか分かっていたから来たまでの話だ」
「あれをばれていたら……忘れたのか?」
ザグレウスの声がひときわ低くなる。
「伝説の百年前の王都――“死の白影”」
従者は戦慄したように沈黙した。ザグレウスは再び視線を地図へと落とす。そこには、新たに編入されたレネヴィルの旧領地がくっきりと描かれていた。
「――だが結局、一番得をしたのは誰だと思う?」
ザグレウスの口元に、妖しい笑みが浮かぶ。
「本公爵さ、当然だろう?」




