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魔法学校の方士先生  作者: 均極道人
第三章 王都
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第四十五話 突入

日も暮れかけた頃、二人はついに――


カミラが囚われている郊外の荘園にたどり着いた。


予想通り、荘園の外には重装備の護衛兵たちがずらりと並んでいた。だが不思議なことに、その様子はまるで“来客を迎える”かのようだった。


陸虚は目を細めて呟く。


「……見ただろ。完全に“お前を待ってる”構えだ。わざわざ、歓迎ムードを装ってる時点で、仕込み済みってわけだ」


リセルは苦笑して肩をすくめる。


「……なら、もう隠れる必要もないな」


二人が堂々と門前に立つと、


 護衛たちの中からスーツ姿の執事のような男が一歩前に出た。


「リセル様、ようこそお越しくださいました」


にこやかに頭を下げながら、彼はこう続けた。


「――我がヴェノムス公爵よりの伝言です。“夜明けまでにカミラ嬢を連れて脱出できたなら、レネヴィル家は無事”。……とのことです」


リセルはニヤリと口元を歪めた。


「ほう。じゃあ、もし救い出せなかったら?」


「……それは、我が公爵様と、貴家のご当主との“ご内密な取り決め”でございます。……私ごときの知ることではございません」


その執事は今度は隣の陸虚に視線を移し、丁寧に言った。


「お客様、よろしければ別室にてお待ちください。お飲み物もご用意しております」


しかし、陸虚は鼻で笑い、肩を回すと近くの木陰に腰を下ろした。


「いらねぇよ。ここで待ってる。……」


そう言うと、彼は静かに瞑目し、呼吸を整え始めた。


リセルは静かに頷き、深く深く息を吸い込む。


その眼に、燃えるような決意を宿して――彼は、真火を纏いながら荘園の門を踏み越えた。


リセルが荘園に足を踏み入れた瞬間――


「来たか、フレアヴァルトの坊っちゃん」


低く、ねっとりとした声が響いた。


薄暗い通路の奥から、ローブを纏った魔法使いが一人、現れる。


 年は三十代後半、顔には古傷、手には魔法杖。


 全身から滲み出る魔力の波動が、そこそこの格上であることを物語っていた。


「悪いがここは通せない。犯人の部屋へは、この先だ。――お前の力、試させてもらおうか。」


そう言った次の瞬間、術師は詠唱を始めた。


「結界術・水流封陣――開け」


ズガァァン!


リセルの足元から四方向に術式が広がり、周囲に青いな壁が次々と立ち上がる。まるで空気そのものが檻となって閉じ込めてくるような感覚。


リセルは眉をひそめた。


「これが……“結界”か」


術師は薄ら笑いを浮かべながら、言い放つ。


「魔法使いにとって“囲い込む”ことは“殺す”より確実なんだよ。お前みたいな雑魚でも時間が経てば魔力切れで終わる」


リセルは――笑った。


「悪いな、“雑魚”じゃなくなったばっかなんだ」


そして――一歩、前へ。


術師が眉をひそめる。


「おい、バカな……その結界は3級の魔力がないと破れないはず……」


「だったら――“魔力”じゃない方法で壊せばいい」


リセルの右拳に、赤い真火がぼうっと灯る。


「真火の力が…」


ドガアァァァァァン!!!


拳が結界に触れた瞬間、空間が爆ぜるような轟音が響いた。リセルの拳が触れた一点から、結界は“真火を吸い込むように”溶けていく。


「なっ……バ、バカなッ……!!」


術師が呆然とする間もなく――リセルはすでに目の前まで踏み込んでいた。


「言ったろ? 俺はもう、前とは違うんだよ!!」


――ドゴォ!!


真火を纏った拳が、術師の腹部に炸裂。


「がはっ……!」


瞬間、術師の体が数メートル吹き飛び、壁に叩きつけられる。その体からは魔力の火花がじゅうじゅうと焼け落ちていた。


(く……魔力が、燃やされて……再生しない……!?)


術師の瞳に、恐怖が浮かぶ。


「て、てめぇ……その力……一体……」


リセルは拳を見つめ、答えせず前へ進む。


――バゴォン!!


壁が砕け、火花が散り、煙が上がる。


「はぁっ、はぁっ……まだ、いける……!」


リセルの全身はすでに傷だらけだった。だがその目は、獣のように鋭く、迷いがなかった。


すでに3人の3級魔法使いを打ち倒し、名もなき警備兵を無数に叩き潰してきた。


そして彼は、ついに辿り着いた。


――カミラが囚われている、荘園最奥の牢獄へ。


鉄格子の向こう、彼女は静かに座り込んでいた。


が、彼に気づいた瞬間、目を見開き、立ち上がる。


「リセル……!? どうして……来ちゃったの!?早く逃げて!! ここは――!」


「カミラ……俺は、お前を助けに来たんだ!」


リセルが一歩前に踏み込もうとしたその瞬間――


「ケケケケ……」


奥の影から、湿った笑い声が響いた。――カツ、カツ、と足音が近づく。そこから現れたのは、黒衣の魔法使い。


その姿はまるで蛇のように細長く、鋭い目つきと毒気を孕んだ笑みを浮かべていた。

「ほぉ……フレアヴァルト家の小僧が、ここまで来るとはな。2級程度で3級を複数撃破……いや、それにしてはおかしいな?」


男の目が、リセルの全身を舐め回すように見たあと――にやりと口角が歪む。


「ふむ、今のお前……魔力?、1以下だな?面白い、面白い。これは秘術か?寿命を削ったか?なぁんでもいい……俺にとっては格好の実験材料だ」

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