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魔法学校の方士先生  作者: 均極道人
第二章 エルフの里
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第十九話 シフの過去

 小さな街道を馬車で進みながら、陸虚は揺れる荷台の上で目を細めた。

 空は高く澄み渡り、春の風が頬を優しく撫でていく。


「ねえ、陸先生、さっきの道、絶対間違えたでしょ」


 シオンが不機嫌そうに言いながら、地図を広げてじっと睨んでいる。彼女の耳はぴくぴくと動き、明らかに苛立ちを表していた。


「……いや、間違ってない。たぶん」


 陸虚は気まずそうに視線を逸らした。どう見ても、同じような林を三度は通った気がする。


「“たぶん”じゃないでしょ! 魔法教師のくせに方向音痴ってどういうこと!?」


 そのやりとりを聞きながら、ドック会長は大きな声で笑った。


「はははっ、いいねぇ、若いってのは! こういう旅も悪くない!」


 馬車の後ろでは、商会の荷物係たちが昼の準備を始めていた。香ばしいパンの香りが風に乗って漂ってくる。


「シオン、お腹減ってない? パンあるけど」


「……別に、ちょっとだけ。いただくわよ」


 シオンはそっぽを向きながらも、手はしっかりとパンに伸びていた。陸虚はふとドックに尋ねた。


「そういえば、ルルファさんって今回は来ないんですか?」


「ああ、ルルファな、本当なら今回も来るつもりだったんだが、嫁さんがもうすぐ出産なんだとさ。さすがに今回はそばにいてやらなきゃってな」


「本当ですか、それはおめでとうことだ」


「まあ、今回は仕方ないけどさ。他がどんなに重要な用事でも断って来るのに……シフ殿と一緒に動ける任務なんて滅多にないからな」


「シフ教頭は、どんな人なんですか?」


 陸虚は少し躊躇いながら口にした。


「ああ、シフ殿か」


 ドックは肩をすくめて笑った。


 「見た目は堅物で、いつもピリピリしてるだろ? でもな、実際に一緒に行動してみるとわかったけど、あの方、ただ無口なだけで、本当はすごく優しいんだよな、ルルファが魔法のことで相談した時も、嫌な顔ひとつせずに、丁寧に教えてくれたらしいよ」


「あのシフ教頭が?……ちょっと意外かも」


「でしょう?俺もちょっと驚いたよ。シフ殿のような貴族って、もっと距離のある存在だと思っていたけど、あんなふうに俺たちみたいな平民にも普通に接してくれるなんて」


「ちょ、待って。シフ教頭って、貴族なの!?」


シオンは最後の一口のパンを口に入れ、もぐもぐと咀嚼しながら言った。


「そうよ、知らなかったの?シフ教頭はただの貴族じゃないわ。炎獅公爵家の出身よ。現当主は彼のお兄さんなんだから」


「そんな家柄の人が、どうしてこのオレリスで教えているんだろう」


「シフ教頭は若い頃、貴族たちの弱い者いじめや権力の横暴が我慢できなくて、家を飛び出したらしいわ。そしてライフタリンで校長先生に出会って、その人柄に惹かれて、オレリスに残って教師になったんですって」


「あれ? それって、どっかの金髪エルフと同じじゃないの?」


シオンは鋭く陸虚を睨みつけた。


「私は最初からシフ教頭の魔法知識を学びたいと思ってたわ。でも、あの人が貴族だから、変な誤解されたくなくて……遠慮してただけよ」


「……それはどういうことだ?」


今回はドックから応えた


「なんだ、陸先生は知らねぇのか。精霊族ってのはよ、ここじゃよく見かけるが、貴族とはずっと仲が悪いんだよ……」

ここまでお読みいただき、本当にありがとうございます!


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