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魔法学校の方士先生  作者: 均極道人
第二章 エルフの里
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第十八話 出発

 家に帰ると、陸虚はソファにだらしなく体を投げ出し、鍋でコトコト煮込まれる肉の音を聞きながら、校長から渡された金の箔押しが施された手紙をじっと眺めていた。しばらくして、本棚を整理していたノアに向かって声をかけた。


「明日から任務があって、エルフの領地に行く。たぶん一、二か月くらいかかる。荷物の準備、頼むな。この間、留守番もよろしく。」


 突然の話にノアは一瞬きょとんとしたが、すぐに気を引き締めて、こくりと真剣にうなずいた。


 「旦那様、危険な任務ですか…」


 「ちょっと危ないかもしれないけど、なにせ呪われた地を越えないといけないからな。」


 「あの、ほんとに……だ、大丈夫ですか? 呪いの地帯って……また魔力、暴走しちゃっ たり、しないですか……?」


 不安そうな顔を見て、陸虚はつい笑ってしまった。ノアの頭を優しく撫でながら言う。


 「大丈夫だよ。校長先生からもらったこの魔道具があれば大丈夫だよ。今回は心配いらないだ。」

 ノアの表情はまだ晴れない。


 「そんなに心配なら……膝枕、してくれるか? そしたら安心して暴走もしないで済むかも。」


 言った瞬間、ノアの顔がふわっと真っ赤になった。


 戸惑いながらも、彼女は小さく頷いて、そっとソファの隣に座り、自分の膝を差し出した。


 「あ、あの……ど、どうぞ……」


 陸虚は頭を預ける。


 温かいぬくもりと、柔らかな感触。ふんわりと香る優しい匂いに包まれながら、目を閉じた。


 「安心だな......」




翌日朝 オレリス 東門


 朝の光が魔法学校の高い窓から庭に差し込み、空気の中に魔法の気配が漂っている。静かで神秘的な雰囲気が広がる中、校内の荷物積み込み場所が賑やかになり、商人たちが忙しそうに貨物を馬車に積み込んでいる。


 普通の物とは異なり、これらの箱の中には高級魔法薬水が入っており、瓶の表面には微かに光る輝きが見え、封印された口には複雑な符文が刻まれている。


 「今年もこの時期か……」


 「ねい、会長、なぜいつもの道じゃなくて、わざわざ呪われた地帯そんなに危ないところに通ってエルフの領域へ行くの?」


 ドックは文句を言う部下の肩を一気に抱えて、豪快に笑った。


 「ははは、ほら新人、いつもの道だったら1ヶ月かかるでしょ、今回は商品が大したものだ、一週間に届かないと、いくら損害がわかる?」


 「でも、あれは噂の呪われた地帯だよ」


 「大丈夫、大丈夫、我々の森林商会はこの任務を何回もやりましただよ、安心しろ、なぜならば、同行の方は炎のフェニックス、オレリスの教頭先生魔導士のシフ殿だ」


 「わあわあ!まさかあの方と同行なんて!」


 シフが一緒に行くと森林商会の新人達は盛り上がっている


 商隊の準備が終わった時に、リブイ先生がゆっくりと歩み寄り、全員の前に立った。


「皆さん、お忙しいところすみません。今回、残念ながらシフは商隊には同行できません……」


 その言葉を聞いた瞬間、場の空気が一気に変わった。


「えっ、シフ殿来ないのか……?」


「嘘だろ、あの人がいないと不安で仕方ないってのに……」


「まさか代わりに誰も来ないとかじゃ……」


「もう今回の遠征、行かない方がよくないか……?」


 動揺と不安、そして明らかな落胆が広がる中、リブイ先生は微笑を浮かべたまま、しかしはっきりと言葉を続けた。


「安心してください、シフの代わりに今回同行するのは、魔導士に負けず、27歳の天才大魔法師である——陸虚先生じゃ。」


「大げさだよ、リブイ先生.....恥ずかしい.....」


 陸虚は気まずそうに頭をかきながら、苦笑いを浮かべて皆に挨拶した。


 その瞬間、商隊の面々がざわついた。一部の者は驚き、また一部は「それなら……」と表情を変え始めた。


 ドックが人混みをかき分け、前に出てきた。


 陸虚の顔を見た瞬間、ぱっと笑顔を浮かべる。


「おお、陸さんじゃないか!久しぶりだな!」


「お久しぶりです、ドック会長。」


 「まあかその後で、陸さんはオレリスの先生になるなんて、よし、話の続きは道中だ!準備ができたら、さっさと出発しようぜ!」


 会長は陸虚の肩をガシッと抱き寄せ、豪快に笑いながら言った。


 「ちょっと待ってください、また一人、多分来るだろ。」


 言い終わった途端、向こうから荷物を抱え、弓を背負ったシオンが、息を切らしながら駆けてくるのが見えた。


彼女は普段とは違う、動きやすそうな軽装姿で、顔を真っ赤にしながらこちらに向かって走って来た


「別に、あなたの言葉に乗せられたわけじゃないからね。……執事として、ちゃんと見張って、サボらせないようにするだけだから!」

ここまでお読みいただき、本当にありがとうございます!


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