第十五話 厳しいな執事
「準備できたか?」
陸虚の手の中に雷元素がだんだん強くなり
「はい、準備万全!雷魔法の力を見せてくるわ」
魔法に特化した分厚い防具を着込んでいたシオンはティアリア展開したバリアの後ろ自信満々と言った
「よ~し、来るぞ、神霄雷槍!」
陸虚の手に集まった雷は、空間を歪めるほどの雷槍へと姿を変え、轟音と共に標的を貫いている、バリアに触れたその瞬間、圧倒的な威力が空間を震わせ、バリアには無数の亀裂が走る。生じた余波が彼女の身体を宙へと吹き飛ばした。
「シオン!」
陸虚は廃墟の中で、灰だらけで土まみれのシオンを引っ張り出した。
「げほっ、げほっ……す、すごい威力……完璧な中級魔法防御を施した状態で、こんなに苦しんでいるとは…あんなの、まともに食らったら灰も残らないんじゃ……?」
「大丈夫か?」
陸虚はシオンの服についた土を軽く払いながら声をかけた。
「大丈夫、大丈夫、陸先生はこの中級魔法のスクロールを作られますか?」
「ふん、多分大丈夫と思いますけど、材料によって威力も相応に減衰する、それに中級魔法のスクロールだから作り時間は相当かかります。」
「了解、中級魔法のスクロールの製作、日程に追加。」
「なんか……シオンが組んだスケジュール、ちょっと詰めすぎじゃないか?もう少し休む時間、残してくれてもいいだろ。」
「却下、休憩時間はすでに十分取ってあります、無駄な時間の浪費は許可しません。」
魔法の話をしている時はあんなに目を輝かせていたのに、仕事の話になると、また無機質で冷たいモードに戻ってしまった。
「陸先生」
「はい?」
「まさかとは思うけど……そのメガネ以外、魔法道具はゼロってこと?」
「あー、その……僕、ちょっと特殊な事情があってさ。魔法道具って、あんまり必要ないんだよね。それに、今お金もあんまり残ってないんだから。」
「陸先生。」
シオンは語気を強めて言った。
「お金は借りればどうにかなるけど、命を失ったら取り返しがつかないでしょ?実力があるからといって、決して傲慢になってはいけない。多くの強者が、その傲慢さ故に細部を無視し、命を失ってきたのだ。いい?今すぐ、私と一緒に魔道具を補充しに行くわよ。どうしても足りないなら、私が立て替えてやるよ。」
「は、はい…」
魔法装備店街
「雷属性魔杖のって、実はあまり出回ってないんですよ。でも、ちょうど一本だけ、いいのが入っています。」
店主は無言でカウンターの下から一つの古びた箱を取り出した。その中に納められていたのは、闇のように深い紫色をした一本の魔法杖だった。
「これは『紫電の導』、うちに一本だけ残っていたものです。導木には“雷魂樹”の芯材、装飾には希少金属“紫鋼”を使用しています。魔力の流れに癖はありますが、雷系の魔法使いにはこれ以上ない相性です。本来この魔杖、300金貨でお売りする予定でしたが、雷系の魔法使いがあまりいないので……ちょっとだけお安くして、200金貨でお譲りしますよ。」
「高!」
陸虚はこう思っている
「その魔杖を試してもいいですか?」
「もちろんです」
陸虚は魔杖を手に取り、両手それぞれで同時に低級魔法の雷鳥を発動させた。左手は素手で雷鳥を完全に呼び出し、右手の魔杖では鳥の頭しか形になっていない、それに左手で発動させた雷鳥は、明らかに魔力がより充実しており、さらに精神的な力が満ちていた。
「魔杖なんて本当に必要ないって。見てよ、僕は杖を使うより、使わない方が元素を集めるのが早いんだ。」
「魔杖を使わないのはもういいけど、防御の魔法ローブくらいはちゃんと用意しなさい!」
シオンがそう言った瞬間、陸虚の体に雷元素のバリアがバチバチと走るように出現した。
「……」
「……」
「それってどういう意味ですか?まさか、お金を使いたくなくてわざとこうしているわけじゃないでしょうね?」
「いやいや違うから!僕の.....完全な魔法端末みたいものが備わっているから、むしろ魔法道具を使うと魔法の発動に悪影響を及ぼすんだ、ほんとにいる魔法道具が思いつかなくてさ!」
突然、陸虚の目がキラーンと光った。狙いを定めた先は――青と白の可愛らしいメイド服だった。
「店主さん、それください。」
シオンは「は?」と言わんばかりの表情で、ぽかんと彼を見つめていた。
「えっと、お客様……実はその装備、少し訳ありでして……」
「どういうこと?」
「実はこの装備、柔軟性と防御力において最高品質の「星蚕糸」で作られていましてね。元々は、物理と魔法の両方を完全に防御できる究極の防具を目指して製作されたんですが……最終的に物理防御があまりにも強すぎて、魔法回路が一切刻めなくなってしまったんですよ。ですので、現在では……ええ、ただの綺麗な鎧として扱われています。」
「物理防御のために装備を探していたのは分かりますが……なぜ女性用の服なんですか?」
シオンはそう思っている
「なるほど、それで今はいくらで売っているんですか?」
「50金貨、いや、60金貨ですね。」
「買います!」
店主は後悔の表情を浮かべ、足りないと感じているようだった。一方でシオンは顔を少し引きつらせ、まさか陸先生にこんな趣味があるなんて、予想もしなかった。
「魔法陣を刻むことができない?それは方法が間違っているからだ。この装備をノアに渡せば、もう安全のことは心配しなくて済む。そして、その服はとても美しく、ノアにとてもよく似合っている。」
その考えが頭をよぎると、陸虚はふとシオンを見て、身長がほぼ同じならサイズも問題ないだろうと思った。
彼の視線がこちらに向けられた瞬間、シオンは驚愕の表情を浮かべた。
「え、もしかして私にそれを着せるつもりなのか?」
女仆服を着ている自分を想像しただけで、シオンは恥ずかしさで顔が真っ赤になった。
「シオンも欲しいのか?これはノアに買ったものだけど」
「ノア……」
頭の中に始業日の日に陸虚を抱いた、あの人間の小さな女の子の姿が浮かび上がり、シオンは恥ずかしさと怒り、さらに少しの寂しさを感じた。
「勘違いしないで、私は別に欲しいなんて思ってないから!」
「もしかして、怒っているの?」
「いや!買い物が終わったら、すぐに帰るよ。まだ終わらせてない仕事が山ほどあるから!」
「あの?」
「今度はまた何をするつもりなの?」
「お金が足りないんだけど、少し貸してくれない?」
「……」
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