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魔法学校の方士先生  作者: 均極道人
第七章 南海群島
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第一百二十二話 絶境

——その向こう側から、**“それら”**が現れた。


「ッ……来たか!」


黒い霧のように歪んだ空間から、数十、いや百を超える異形の“何か”が、まるで虫の群れのように這い出てくる。


うごめく触手、奇怪な眼球、金属のようにきしむ鳴き声。


明らかにこの世界に属さぬ存在、虚空の魔物たち——!


「う、うわ……なんだよ、ありゃ……!」


アイゼルが目を見開いて、絶句した。


唯一の救いは、狂乱状態のままなお強烈な魔力を放っている海龍族の族長が、**“囮”**となってそのほとんどの敵意を引きつけていることだった。


だが——


「……こりゃ、もうダメだろ……陸先生。オレらじゃ、勝てねぇよ……!」


珍しく弱音を吐いたアイゼル。


それほどまでに、敵の数と質が圧倒的だった。


だが、その時——


「お前がやれ。」


「……は?」


唐突な陸虚の言葉に、アイゼルが呆けた顔をする。


「……な、何を?」


「“時間の法則”だ。僕が、お前に父親の法則の軌道を一時的に写す。お前はそれに乗って——“繋げ”ばいい。」


「いやいやいや!俺、まだ“理解”もしてねぇって! 無理無理無理だって!」


「やれ。」


陸虚の目が真剣だった。


その瞬間、陸虚の背後で陰陽金丹が光り始めた。


雷光が空を裂き、金丹の“陽”がうねるように回転し——


「……僕の力に、乗れ!」


「っ、うおおおおおおおおっ!!」


アイゼルの中に、時間の流れが**“流し込まれる”**ような感覚が駆け抜けた。


身体が震え、魂が軋む。けれど——


——見えた。


父の背中が——


父の“時”が——


——一瞬、確かに見えた。


「——“時の鎖”!!」


空間に、淡い青い鎖が現れる。


それは裂け目へと向かい、今にも拡大しようとする虚空の“眼”に絡みついていく……!


——時間の鎖が、虚空を再び縛り付けた。


一瞬、海と空の境が静まり返る。


だが——その静寂は長く続かない。


虚空から這い出てきた魔物たちが、突如として陸虚たちに殺到してきたのだ!


「くっ、こっちに来る……!アイゼル、鎖を離すなよ!」


「わ、分かってるけどッ!」


陸虚は金丹で時の流れを操作しながら、アイゼルに法則の補助を続けている。


しかし、そのせいで両者とも完全に戦闘不能。


一方、狂乱状態の海龍族の族長は——


「ぐるる……グオオオオオ!!」意味不明の方向にブレスを吐きながら回転しており、何の戦力にもならなかった。


「……マジでこいつ使えねえ!!」


アイゼルが涙目で叫ぶ。


そして——


その瞬間。


「——ニャー!」


可愛らしくも力強い声と共に、蒼炎が虚空魔獣を焼き尽くした。


「っ……!」


爆風が吹き抜け、迫っていた虚空魔獣が数体、光の粒子となって散っていく。


「小花……!」


陸虚が、微笑んだ。


現れたのは、一匹の小さな猫のような姿。


だがその瞳には炎が宿り、爪には“深海でも消えない”神聖な焔が燃えていた。


「にゃんにゃんパンチだ」


――ズドォン!!


深海を包む水の圧力をものともせず、


小花が振るった拳からは、燃え盛る造化の炎が螺旋を描き、敵を吹き飛ばしていく。


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