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魔法学校の方士先生  作者: 均極道人
第七章 南海群島
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第一百十五話 噂

「ダル……?」


「彼も守護者には違いない。でも――野心が強すぎるの。海族の中でも、彼のやり方を好む者は少ないわ。」

風が、回廊をすり抜ける。


水のように穏やかな学院に、ほんの少しだけ、鋭い波紋が走ったようだった。


リュミエールはふと足を止めて、周囲を見回しながら声をひそめた。


「それにね……これは、あくまで私の勘なんだけど――」


急に目を輝かせながら、ガルドの耳元で囁いた。


「最近のメリー校長、なんだか前より若返ってる気がするのよ……!」


「は……?若返り?」


ガルドが眉をひそめると、リュミエールは更に声を潜めて、


まるで学園内の裏話を暴露するかのようなトーンで続けた。


「それだけじゃないの。この前、オレリス魔法学院の代表たちが帰るときに見ちゃったの。オグドン校長……あの白髪のじいちゃんが、なんがイケおじに変わってたのよ!?」


「ええっ!?」


「しかもね……昔、メリー校長とオグドン校長には“何か”あったって話、結構有名なのよ? 詳しいことは誰も知らないけど、学生の間では“禁断のロマンス”って言われてて……」


八重歯をのぞかせて、リュミエールがいたずらっぽく笑った。


「もしかしたら、試合のときに“何か”再燃しちゃったりしたのかもね~」


ガルドは呆れたように天を仰ぐ。


「……お前って、意外とそっちの話好きなんだな。」


「え?だって面白いじゃない。ふふ……“大人の恋”って、ちょっと憧れるでしょ?」


ちょうどリュミエールが、目を輝かせながら次のネタに入りかけたその時――


「……それだけじゃないのよ!私、もっとすっごい話を聞いちゃって……!」


と、彼女が更に口を開こうとしたその瞬間――


「…………っ!!」


目の前のガルドの顔色がサッと変わった。


「……な、なによ、その顔……。いいところなのに……あ、そうだ!実はね、オグドン校長とメリー校長って――」


「やめろおおおっ!!」


ガルドが慌ててリュミエールの口を手でふさいだ。


「んー!?」


「(お前……!後ろ、後ろ!!)」


彼の目が必死に訴えてくる。


「(……え?)」


リュミエールは戸惑いながらも、ぎこちなく振り返った。


そこには――


爽やかな微笑みを浮かべながら、


こちらをじっと見つめている銀髪の女性の姿。


「ふふふ……。ねえ、リュミエール?“もっとすっごい話”って、どんな話かしら?」


それは――


メリー校長、その人であった。


メリー校長は、やれやれと言わんばかりに微笑みながら、


リュミエールの頭をくしゃくしゃと優しく撫でた。


「全く……あなたは昔からお喋りが過ぎるのよ。


でも、元気そうで何よりだわ。」


そう言うと、今度は真っ直ぐにガルドへと視線を向ける。


「あなたの顔は、ちゃんと覚えているわよ。


前回の学院試合――学生部門の優勝者、炎獅子公爵のご長男ね。


今回は……学院を訪れた理由があるのかしら?」


ガルドは緊張しつつも、きちんと礼をして目的を伝える。


メリーはその名を聞いて、静かに目を細めた。


「――第五位の魔導師が、ついに。……シフ、ね。ふふ、やっぱり彼だったのね。」


彼女は微笑を浮かべながら、どこか懐かしむように呟く。


「予想はしていたけれど……思ったよりずっと早かったわね。……さあ、詳しい話は図書館で聞かせてもらいましょうか。」


そう言って、くるりと踵を返すと、


メリー校長は学院の奥へと歩き出す。


彼女の背中を見送りながら、


リュミエールとガルドは慌てて後に続くのだった――


三人は、白い珊瑚でできた小道を歩いていた。道の先に見えてきたのは、まるで潮流の中に佇む宮殿のような建物だった。

仕事関係で週二回更新を変更しますので、ご理解頂ければ幸いです。

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