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魔法学校の方士先生  作者: 均極道人
第七章 南海群島
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第一百十四話 メイヴィレーナ融合魔法学院

一方その頃――


リュミエールはぐったりしたガルドを連れ、無事にメイヴィレーナ融合魔法学院へと戻ってきていた。


道中、特製の酔い止め薬を飲ませたおかげで、ガルドの顔色もだいぶマシになっていた。


「ふぅ……助かった。もう一度あの船に乗るくらいなら、敵の大群に突っ込んだ方がマシだ……」


肩で息をするガルドが、ようやく本題を切り出す。


「実は、シフおじさんの依頼で……新しい学園の設立に必要な、“空間転移式の基盤陣”を借りられないかと思ってさ。」


それを聞いたリュミエールは、にこりと笑ってガルドの顔を覗き込んだ。


「ふふっ、なるほどなるほど。でもねガルド、本来そういう“転移陣の核”って外部には貸し出さない決まりなのよ?」


「えっ、じゃあダメか……?」


「――まあ、校長と私、ちょっと特別な関係だから。あなたがちゃんと“お願い”してくれたら……ちょこっと、私から口添えしてあげてもいいけど?」


「な、なんだよそれ……!」


ガルドは顔を真っ赤にしながらも、視線を逸らしてぼそぼそと呟いた。


「……お願い、します。リュミエールさん。」


リュミエールは満足そうに頷き、軽くウィンクした。


「よろしい じゃあ、交渉は私に任せておいて。……ところで、さっきの“さん”付け、ちょっと可愛かったわよ?」


「……くっ……!」


平時は厳格な炎の獅子が、珍しくも困ったような表情を浮かべた。


メイヴィレーナ融合魔法学院。


それは南方諸島のなかでも最大級の島に広がる、人族と海族の共学機関。


敷地は島の中央から南西部にかけて広がっており、碧く澄んだ入り江と白砂の海岸を自然のまま抱えている。


正門から続く石畳の道には、片方に貝殻をあしらった街灯が並び、もう片方には珊瑚を思わせる形の魔法装置が点在していた。


それらは常に“陣”として組み込まれており、魔力の循環と結界の維持を担っている。


「この道……全部“陣”の一部なのか?」


ガルドが不思議そうに周囲を見渡す。


「そうよ、うちの学院は“構造陣”と“生活陣”の融合が特色なの。歩くだけで集中力が整うようになってるんだから、不思議でしょ?」


リュミエールはそう言って、裸足のまま波のように滑らかな道を歩いていく。


通りを抜けると、目の前に見えてくるのは学院の中枢――


『海心の環殿かいしんのかんでん


人族が築いた石造りのドームと、海族が編み上げた水晶のアーチが複雑に交差し、


それぞれの魔法文字が浮かび上がる巨大な建築物。


殿内には潮の音が静かに響き、


中央には学院の防衛を担う**大陣式“潮輪陣ちょうりんじん”**が、常に淡い光を放っている。


種族の融合は建築だけではない。


すれ違う生徒たちもまた、人間、マーマン、海蛇族、魚鱗の耳を持つハーフ……


まさに“海と陸の混血”たちが、楽しそうに言葉を交わしながら行き交っていた。


「……へぇ、これが“融合”の形か。」


炎のように熱く、荒野で鍛えられたガルドにとって、


このゆったりとした空気と、交わり合う魔力の“静かな秩序”は、どこか新鮮で、くすぐったい感覚だった。


学院の中枢『海心の環殿』に向かう途中――


回廊に差し込む光が水面のように揺れるなか、ガルドがふと問いかけた。


「なあ……その、メリー校長って、どんな人なんだ?」


その言葉を聞いた瞬間、隣を歩いていたリュミエールの瞳が、ぱあっと星のように輝き出した。


「メリー校長はね――強くて、優しくて、それでいてすっごく賢い人よ!」


語りながら、彼女の足取りがどこか軽やかになる。


「人族の出身だけど、海族に一切の偏見を持たずに接してくれるの。


この学院も、もともと海の民のために立ち上げてくれたもので――


私たちが魔法を学び、未来を築く場所をくれたのは、メリー校長なのよ。」


その声には、敬意を通り越して憧れと信仰に近い感情が滲んでいた。


「今じゃ、この学院だけじゃなく、南方諸島全体の民から尊敬されているの。


彼女は、私たち海族にとって……唯一無二の守護者よ。」


ガルドは腕を組み、ふむ……と唸る。


「海族の“守護者”ね。つまり、彼女はその……リーダー的な存在ってことか?」


「そうね。でも“唯一”じゃないのよ。正確には……二人いるの。」


「……もう一人は?」


リュミエールの目がふっと伏せられた。


先ほどまでの輝きとは違う、どこか遠巻きな影がその瞳に差す。


「……海龍族の族長よ。名は……ダル・グライア。」

仕事関係で週二回更新を変更しますので、ご理解頂ければ幸いです。

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