3-2
ゴールデンウィーク中のある日の昼だった。彼女は彼をいつものようにアパートの部屋に呼び、キッチンでカレー作りの仕上げをしていた。
彼が部屋で付け合わせのグリーンサラダをつまみにビールを飲んでいるところへ、彼女は皿にこんもりと盛ったカレーライスを運んだ。
ローソファに二人並んで座って、黙ってカレーを食べ始めた。彼はゆっくりゆっくり、一口ずつ、スプーンにカレーとご飯をすくってよく味わいながら食べていった。
彼女もカレーを食べつつ、(うん。だいじょうぶ、今回のも美味しくできているはず)とカレーの味の分析に集中していた。その時だった。右隣に座っている彼の方から、
「ぐっ……、ひくっ……」
としゃくりあげるような声が聞こえ始めたのである。
不審に感じて隣を見ると、彼が涙を流して、その声を咽喉から絞り出していたのだった。
「どうしたの!?」
彼女がびっくりして聞いた。
「いや別に、なんでも……ふぐっ……ない」
彼はそう言っただけで、後は黙ってしまった。そうして泣きながらカレーを食べ続けた。
彼女もそれ以上は何も聞けず、全く味の感じられなくなった、久々に作った得意のレシピのカレーを食べ進めた。