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人生の裏切り者

作者: 夜凪汐

やっと夜になった。鬱陶しい陽の光ももう僕を照らすことはない。イヤホンから流れるヴェートーベンの月光と暗闇と戦うかの如く叫ぶ虫の音だけが聞こえる。夜になると思い出すのはかりそめの幸せで作られていたあの日々。知らなければよかった、何もかもが信じられなくなっていった去年の夏。僕は一人で深淵に堕ちる。

「お酒を飲んで睡眠薬を飲むと飛び降りるときも怖くないんだって」君は体育館の屋上でそういったね。あのときは君がどこかへいってしまわないように必死で言葉を紡ごうとしていた。僕が掴んだと思ったものはいつだって手のひらから抜け落ちていく。もしくは掴んだと錯覚していただけだったんだ。あの時と変わったことといえば隣に君がいないことだろう。君は僕の背中を押す無数の手の一部分に変わった。それだけのことだ。僕が大切にしようとした人たちは、みんなそろって僕を苦しめる。だから自分はこの世に存在してはいけない人間だと気づいたんだ。

さて、憂鬱な人生なんぞさっさと終わらせてしまおう。昼間から少しずつ飲んだウイスキーを割る水がなくなってしまった。潮時を確信した僕は睡眠薬の瓶から十分すぎる量の錠剤を取り出しあまりのウイスキーで飲んだ。その刹那、世界が逆転したかのようなめまいに襲われた。上手く立つことができない。意識が朦朧としてきた。死ななければ。歩かなければ。その先にある世界が無だとしても地獄だとしても。今際の際でこの世界にしがみつくような無様な真似だけはあってはならない。歩け。歩け。涙か汗かわからない何かで視界がぼやける。大丈夫。屋上の床の血のような赤色が、進むべき道を示してくれる。何歩歩いただろうか、まだ全然進めていない気がする。しかしながら、行く先を示す血の色が眼前で途切れた。生と死の地平線。恐怖はない。さあ行こうか。皆に平等に不平等な世界に、別れを告げよう。

さよならだ。

落下とはどういうものだろうと考えたことがある。自分が落ちるとき、飛んでいるような感覚なのだろうか、ただただ重力に引っ張られるような感覚なのだろうか。正解は後者であった。浮遊感などなく頭から引っ張られるように落ちていく。その刹那、地面に叩きつけられたかのような感覚があった。自由落下とはあまりにも早いものだなと思った。そして次の瞬間、僕は幽霊になった。体は何もかもを貫通したし、自分を操ることは、現実よりも簡単で容易かった。この体で何をしようか、自分はもう自由だ。やりたいことはいっぱいある。今まで自分の中に隠しておいたユーモアが溢れてきた。東京の空を飛び回るのもいい、自分の推しの実生活を見に行くのもいい。とりあえず、世界旅行にでも行こうか。そう思ったとき世界は白く輝き始めた。あの憂鬱な光によって拘束されている。体がうまく動かない。頭に大きな痛みを覚えた。そして、世界は暗転した。意識も感覚も消えていった。

 次に目を覚ましたとき、眼の前には白い壁があった。天国や無に到達したようにおもえた。しかしそんな嬉々とした気持ちが絶望に変わるのにそう時間はかからなかった。寝台に載せられた自分の体の感覚が返ってくる。メトロノームのように連続した電子音が耳元で鳴っている。そこは何の変哲もない病院だった。生きていたのだ。どうやら自分は飛び降りてすらいなかったのだ。酔って倒れて頭を打っただけだったのだという。なんの言葉も出なかった。ただ呆れていた。ここまで生に醜くしがみつく自分自身に。こんな状況を神に命を救われたと言う人はいるだろう。そんなはずがないのだ。神に見捨てたれたんだ。自分の望み通りに死ぬことすら叶わなかった。死なせてもらえなかった。生きるのも難しいが死ぬのも難しい。どうやってこれから生きていけば良いものなのか。僕にはわからない。きっと自殺未遂者という看板を大事に抱えて生きていくのだろう。あのとき死んでいたらと後悔を何度も繰り返すのだろう。僕は、僕自身に裏切られたのだ。

 僕は自分が大切だった。でもやっぱり、大切にしていたものは僕を苦しめる。自分で、自分自身を苦しめる事になってしまった。きっとまた自殺を試みるだろう。僕が生きていて苦しい原因は自分自身にあったのだから。死ぬまで自分を殺そうとし続けるだろう。自分から開放された先に理想郷があると信じて。

 それが自分への愛であり、救済であり、弔いである。





初めて投稿しました。こういう鬱小説を書こうと思ってます。人生も憂鬱ですが、小説を書いてるときはその憂鬱さから逃れられる気がします。ちなみに僕は愛する人にいつかころしてもらうために生きてます。表現とか、しようと思ってできなかったところもありますし、過剰にかいたところもあります。アドバイスください。

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