暗い屋根裏部屋の思い出
子どもの頃、押し入れの中や屋根裏部屋みたいな薄暗い場所が大好きで、よく忍び込んで遊んでいた。
父の実家はそれなりに広かったため、そういった隠れ場所が多く「かくれんぼ」でもよく入り込んだ記憶がある。
一人で入るよりも、話し相手のいる二人で入る方が楽しく、私はよく従妹と二人で押し入れに入って遊んでいた。
「ねぇねぇ、なんかココ、ドロッとしたの出てるよ?」
「あぁ、これは松脂って言うんだよ」
「松脂?」
「うん、集めるとバイオリンとか床の滑り止めに使えるんだよ」
「本当!?」
当時何も知らなかった私は、初めて知る松脂というものに胸をワクワクさせ、家中を探し回ったものである。
ただ、古い家だったこともあって残念ながら松脂はほとんど集まらなかった。
集めた小さな欠片を祖母に見せると、「このくらいじゃ使うのは難しい」と言われガッカリしたのを覚えている。
しかし諦められなかった私は、親や祖父母に入ることを禁じられていた屋根裏部屋を探すことにした。
「ちょっと、やめた方がいいよ~! 絶対怒られるって!」
「バレなきゃ大丈夫だよ!」
私は従妹の忠告も聞かずに梯子をよじ登り、屋根裏部屋に入った。
屋根裏部屋に窓はなく、その暗さに恐怖を感じた私は早く従妹にも上がってくるよう促す。
渋々といった感じで従妹は梯子を登ってきたが、登りきる直前で足を踏み外してしまう。
待ち構えていた私はなんとか従妹の腕を掴み、引き上げることに成功する。
しかし梯子は外れてしまい、降りることができなくなってしまった。
「ど、どうしよう……」
親達は出かけているため、帰ってくるまでずっとこの屋根裏部屋で待つことになる。
さっきまでは好奇心が勝っていたのに、今は暗くて不気味なこの部屋が怖くて仕方がない。
親には間違いなく怒られるだろうが、それでもいいから早く帰ってきて欲しいと願った。
二人で身を寄せて震えていると、部屋の奥の方から物音が聞こえる。
視線を向けると、そこには何か、大きな生き物がいた。
「ひぃっ!?」
大きな生き物は、私の声に反応してこちらに振り向いた。
そのあまりの恐怖に私達は気を失い、次に気づいたのは両親達に助け出されたあとだった。
あの生き物は一体なんだったのか。
祖母が言うには忍び込んだ溝鼠じゃないかということだったが、あの時の私には間違いなく1メートル以上に見えていた。
あれは恐怖が見せた幻だったのか、それとも……