7)ヌーシャくんの困りごと ~ あぁ、時計の位置がズレてるな。
コンサートを終え巣穴に帰宅したホッキョクキツネのヌーシャ。
彼は、そこである異変の気づく。
それは・・・
北極に住む白いキツネたちの間には、こんな伝説があります。
冬の夜に流れる星に祈ると願い事が叶う
例えば、ある美しいメスキツネ『タマモ』は、流れる星に9本の尾を願い、美女に変化して王様と結婚したといいます。
また、ある麗しい白銀のオスキツネ『クラマ』は、流れる星に魔界への転生を祈り、植物を武器に変え、バラを持って戦う赤髪の少年に転生したといいます。
キラキラと流れるお星さま。
今日もまた、キツネたちの願いをかなえてくれるのでしょうか?
★彡
コンサートを終えたヌーシャは、巣穴に帰宅しました。
彼は、フォックーズ という アイドルグループの人気メンバーなのです。
お気に入りのベンガルトラのコートを脱ぎ、ハンガーにかけます。
ふかふかの椅子に座った時、彼は、違和感を感じました。
何か違うのです。ぐるりと部屋の中を見渡しました。
…時計の位置が動いている。
大事にしているキツネックスの腕時計コレクションの並びがズレていたのです。そう、よく見ると明らかに、誰か部屋に入った痕跡があります。
これは…あいつの仕業か…。
熱心なファンだと思えば、我慢してきたが、
流石にこれを許すわけにはいかない。
ん…? 手紙?
テーブルにポツリと置いてある手紙に気づいたヌーシャは、それを手に取ります。
ヌーシャへ
毎日、お味噌汁を作って欲しいって
言ってくれてうれしかった。
指輪 大切にするね。
ニーシャ
ビリリっ!
2つに破れて 手紙が、飛んで行きます。
はぁぁ?
お味噌汁を作って欲しいは、ミュージカルのセリフだろっ。
指輪?
彼は、指輪を入れてある宝石箱を開きました。
あぁ、グループ結成1周年の記念に作った指輪が無いっ。
盗まれている。
くそっ。ストーカーめ。
ヌーシャは、急いで (株)シロクマ警備 を呼び出し、巣穴の警備を任せました。
もう一歩たりとも 部屋にストーカーを入れるつもりはありません。
とりあえず、ホテル住まいだ。
また、新しい巣穴を探さなきゃな。
そう思って、歩いているヌーシャの頭上で、小さなお星さまが、ピューッと流れました。
☆彡 ピューッ
しかし、残念なことに下を向いていたヌーシャは、夜空の星の動きに気づくことはありません。
彼は、一人 夜道をホテルへと向かって歩くのでした。
★彡
北極に住む白いキツネたちの間には、こんな伝説があります。
冬の夜に流れる星に祈ると願い事が叶う
空には、今日も星が流れます。しかし、星に祈る者は無く、北極星だけが、少し困った顔をして瞬いていました。
文字数(空白・改行含まない):1000字
こちらは、「冬の童話祭2022」のテーマ『流れ星』と「冬の童話祭2021」のテーマ『さがしもの』に、『第3回「下野紘・巽悠衣子の小説家になろうラジオ」大賞』のキーワード『時計』をタイトルに挿入した超短編小説です。
感想で、短編の合本を希望されるものがございましたので、1つにまとめました。蛇足などを加えております。