死者の魂
「死者の魂が安らかに眠れる様に、その魂に祈りを捧げる。」
御子神はゆっくりと瞳を瞑る。大きな瞳が閉じられると、長い睫毛が際立った。飯島には、その1本1本もキラキラと光を放っているかの様に見えるのだった。
「望みが叶うのは…。魂の方です。」
御子神は、そう言って瞳を開けた。大きな瞳が鏡越しの飯島を映す。飯島は御子神の世界に囚われている。
「望みが叶うのは、魂?」
「はい。その言い伝えでは、そうなりますね。まぁ。その言い伝えが時の流れの中で変化をした…。と云うのが有力とされています。」
御子神は、少し儚く見える表情を見せた。
そしてー。
「これが…。流れ星に願い事をすると叶う。この言葉の真相に最も近いのではないでしょうか…。でも…。」
と言ったのだった。
「でも?」
飯島は御子神の髪を切り揃えながら問う。髪は切り離されるとハラリと地面に吸い込まれて落ちる。
「大勢の人は、言葉の裏にある物語を知らないのです。知っていると、この『流れ星に願い事をすると叶う。』と云う言葉は、意味が変わってきますよね?だって色々と入れ替わっているじゃないですか…。」
「言葉の裏にある物語…。意味が変わる…。入れ替わる?」
飯島はポツリと呟いた。何故かー。脳裏に恋人の上村直仁の顔が横切った。
「ですよね?ね?」
御子神は凛とした声で同意を求めた。