星ではない
「えっ?」
飯島は予想していなかった言葉に動揺する。
小学生である御子神から、このような言葉が返ってくるとは思っていなかったのだ。飯島は目の前に座る少女を、もう1度、まじまじと視てしまう。その少女は大きな瞳で鏡越しの飯島の顔を覗き込んでいた。
「そもそもです。流れ星は...。星ではないんですよ。」
御子神は大きな瞳をキラキラと輝かせている。
「星じゃない?」
「はい。流れ星と云われてはいますが、星ではないのです。ただの塵ですよ。塵。宇宙空間に漂う1mmから数cm程度の塵。端的に云うと...。粉末状、粒子状になって飛び散るモノですね。塵芥ですよ。塵芥...。」
「塵?」
飯島の考えていた流れ星とは程遠かった。程遠かったから、出てきたのは単語だけだった。
「ですね。宇宙空間で漂う1mmから数cm程度の塵の粒が、高速で(秒速20~70km)で地球の大気に飛び込んでくるのです。すると塵の粒の前にある空気が急激に圧縮されて高温・高圧になる。それによって大気がプラズマ化をして、光を放つのですよ。要は...。塵、そのモノが光を放っている訳では無いのです。」
御子神は人差し指を、曲げ伸ばしながらー。
そう言った。
飯島はー。
言葉を失う。
自分の知識として持ち合わせていた流れ星とは、ロマンティックなモノだった。星が輝きながら夜空を移動するモノなのだと信じて疑わなかったからだ。
「では。何処から、その塵が発生しているのか...。」
御子神はー。
そう言うと楽しそうに微笑んだ。