双子座流星群
「えっ?そうなの?近々、流星群が見られるの?」
飯島はー。ふと我に返り言葉を紡いだ。そして、少しの間を空けてから、鸚鵡返しの様な自分の言葉を恥じた。これでは何方が歳上なのか解らない。
「そうですよぉ。確か、次の金曜日ですね。」
御子神は人差しを微かに左右に振りながら、そう告げた。
そしてー。
「三大流星群の1つ。双子座流星群ですよぉ。冬の澄み切った夜空ですから、尚更、綺麗に見えるはずですね。あっ。双子座流星群と言ってますけれど、双子座から星が流れてくる訳では無いのですよ。双子座の方向から流れてくる様に見えるから双子座流星群なのです。」
と言葉を続けた。
飯島は言葉を返す。
「流星群って素敵だよね?ロマンティックと云うか...。」
言葉を空間に放ちながら飯島はある人物を思い浮かべていた。
『上村直仁』
飯島の恋人である。上村は、この理容室へ訪れる客の1人だった。彼と会話を重ねる毎に、彼の人柄に惹かれ、付き合う事になったのだ。彼は度々、ロマンティックな言葉を紡ぐ。
『流れ星に願い事をすると、その願いが叶うんだよ。』
彼の言葉が頭を過ぎる。
その言葉を、飯島は擦った。
「ほら。流れ星に願い事をすると、その願いが叶うって言うでしょ?」
御子神は、冷静に1度瞬きをするとー。
「流れ星が堕ちて…。希望が叶う?」
と言いー。
「そんなもの、何処に浪漫があるのでしょう?」
と続けた。