流星群
「そうそう。近々、流星群が見られますよぉ。」
御子神は、そう言った。その言葉が御子神の唇から零れたのには、店内に響いている曲が関係している。
その曲はー。
飯島が好きな曲であった。
その曲が流れてきた時、不意に飯島はー。
「あっ。流星群だ...。」と呟いていたのだった。
きっと御子神は、その独り言を聞き逃さなかったのだろう。
飯島は理容師である。子供の頃から憧れていた理容師の仕事をしている。此処の理容室は、女性も頻繁に訪れる。女性が予約をすれば個室での理容が可能だからなのだろう。
飯島の瞳に映る、御子神は幼く見えた。いや、幼く見えたと云うと誤解を生じてしまう。実際、御子神と云う少女は幼いのだった。飯島が初めて御子神の年齢を知った時は、とても信じられなかったほどだ。
11歳。
其れが御子神の実年齢なのだ。
身長は飯島よりも15cm以上も高かった。
脚の長さと、それよりも上の長さが同じなのだと錯覚するほどに、脚はスラリと長い。
艶々とした黒髪を肩甲骨の辺りまで伸ばしていて、その1本1本がキラキラと光を反射している。
普段は大きな黒縁の眼鏡を掛けているのだが、髪を切る時には外していた。その瞳も大きい。キラキラと光を纏い、吸い込まれるかのような感覚に囚われる。
そう。
御子神は美しかった。
小学生と言われても、信じる人はいないだろう。
それに、その少女は輝いていた。
夜空で輝く星々よりも綺麗に...。