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御子神は語る。流れ星のお話。  作者: 倉木英知
エピローグ
10/10

切り離されるのは…。


そう考えてしまった時からー。

私は…。

心ここに有らずの状態が続いた。

ふと気付くと…。

床に散らばる髪を掃除している自分がいる。


御子神との会話が何かしらの影を心に落としたのだろう。


別れ際にー。

その少女は、こう言っていたと思う。


「ロマンティックな言葉にも。童話(どうわ)御伽噺(おとぎばなし)にしても。何かしらの闇があるのだと、家庭教師の先生が言ってました。そう思って、思い返すと…。なるほど…。思い当たる節があるものですね。」


(ほうき)で髪を塵取りへと移しながら…。

私は恋人である上村直仁(うえむらなおひと)の顔を思い浮かべている。


掃除をしながらー。

私は上村へと連絡をした…。

【ただ、声を聞きたくなった。】

何となく、そう思ったからだった。


上村の声は耳に優しい。(しばら)く、会話をしていると…。


スマホ越しからー。

女性の声が遠くに聞こえる。


「あっ。会社の人と話をしていたんだ…。」

上村は、少し遠くから、そう言うとー。

「また、掛け直すよ…。」

と続け、通話を終える。



私は、その言葉の裏にある物語を考えてしまった。

その言葉は、私に向けて言ったのだろうか?

それとも…。私以外の誰かに言ったのだろうか?



静寂が辺りも心も包んだ。

聞こえるのは蛍光灯のジリジリとした音だ。

目蓋を閉じると…。

少女の言葉がグルグルと廻る。



そう。

私は…。

毎日、(はさみ)を扱う。


ジョギリ。ジョギリ。

そう音を立てながら…。

私は髪を切る。


髪を切り、掃除をしていると…。

ふと、髪の塊が無気味に思えたのだった。

あんなにも艶々と光を反射していた髪がー。

鋏に切り離されるのと同時にー。


【死んでいく。】


ジョギリ。ジョギリ。と…。

色が褪せては、くすんでいく。

艶も。香りも。手触りも。

其の()れもが、【死んでいく。】


生命から切り離されたらー。

堕ちて死んでいくのだと…。


その考えが頭から離れはしない…。


「全然、ロマンティックじゃない…。」

私の唇から、無意識に言葉が零れ落ちた。



その後、暫くしてー。

私は、死骸を掻き集め…。

店の裏のポリバケツへと放った。

不意に何かが嗅覚を刺激する。

つられて、私はポリバケツを覗き込んだ…。



何故か、其処には【手首】があった。

色は褪せて、くすんでいる。


何事も無かったかの様に…。

私は、ポリバケツに蓋をした。






















あぁ。






















「やっぱり、切り離されると死ぬんだな…。」

そう呟いて…。

私はー。

翌日、店を辞めた。

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