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エロいことしか考えない男とグリシスタ教のシスターさん

 うちの学校には可愛いシスターがいる。特別に黒装束を許された彼女はグルシスタ教というよく分からない宗教団体に属してるそうで、信者探しに学校に来ているという中傷のような噂が広まり、なかなか仲の良い友達ができずにいるようだ。


 なぜ、俺がそんな少女のことを気にしているかというと彼女が俺の席の隣にきたからである。しかし、中傷を知ってるためかおじおじしていて別に話しかけてくるということもなく、一週間が経ち、そのいじらしい姿が逆に俺の胸に突き刺さったからである。


 可愛い子がいるとほっとけない俺は一週間の我慢の末、もう我慢ならず、隣にいるシスターさんに声をかけることになった。


「あのさ、天音(あまね)さん」


「は、はへぇ?」


 彼女は驚いたように目を見開き奇声をあげる。その仕草がもう可愛い。あと、無防備なところにエロスを感じるのは俺だけか。


「その...なんか話しづらそうだけどどしたの?」


 と僕が彼女に聞いてみると


「え、えっあ、えっと、...特段話さないし馴れ馴れしく話すとかダメなこともしれないとかなんとか、友達になってくれませんかとかえーっとえーっと、あの、初めて話しかけてくれてありがとうってことっと全然クラスに馴染めなくてどうしたらいいんだろう、私なにか悪いことしたかなとか普通にお話ししたいなぁとか思ってませんからぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」


 彼女は思い詰めたようにそう発言し、僕を避けるように逃げ去ってしまった。そろそろチャイムも鳴るのに逃げてしまった。...逃げてしまった。僕の手は宙を切り、悲しく沈んでいく。


「はぁぁ、上手くいかない。どうしてこんな惨めな思いをするんだろう」


 俺は落ち込み、顔を机にくっつけると、なかなか離れなかった。


 そう、俺は可愛い子全般大好きで、そしてエロい目で見てしまうのだ。そこから導き出される答えは女子には訝しげな目ゴミを見るような目蔑むような目、男子には同情、憐れみの目が向けられる。  


 もう顔に出てるんだよとまで言われる始末。僕は隠しているつもりなのだが、女子というのはそういう目に敏感で(自意識過剰ともいえるが)すぐに分かるらしい。その中でも俺は異常なくらい分かりやすいらしい。


 そんなのは幼なじみの虚言だろうと思っていたが学年が上がるたびに日に日にその言葉は現実味を帯びてきたのだ。


 そして、今では女子の間で俺は顔は悪くないのにあいつは危険なやつあいつの前で醜態を晒したらもう嫁に行けないと言わしめられるほどの嫌われよう、逆に男子からはお前みたいにその気持ちを包み欠かさないのは本当にすげぇーと不名誉な尊敬を受けている。


 なんとか一週間も頑張って念入りに話しかける準備をして顔が緩まないように強制して、今イチオシの彼女との会話を楽しみにしていたのにあっさりとフラれてしまった。涙ぐましく努力が泡となった。結果また、気味悪がられる理由と話のネタを作ることにしかならなかった。


 悲しすぎて涙も出てくる。しかも次から次へと溢れてきて、


「わ、わ、わ、ど、どうしたんですか?なんで泣いてるの??」


 鼻水まで出てなくて本当に良かったと思った。天使のようなシスター天音さんが俺の目の前にいたのだから。


「あ、あれ、おかしいな、天音さん?」


「はい、私は天音(あまね)千佳(ちか)です。はじめまして、金木くん」


 何を振り切ったのか知らないが随分と話しかたが流暢になり、前のたどたどしさが少ない。そういうのもめっちゃ良い。むしろ、ウェルカムだ。


「どうして...」


「せっかく話しかけてくれたのに、無視してしまったのはよくないと思って。あと、私もお話ししてみたくて」


 天音さんは照れ笑いを見せながら僕にそう話した。なんだ、めっちゃ可愛いじゃないか。もはや、好きを通り越して結婚してほしい。


「そうそう、天音さんについて教えて欲しいんだよ。俺、噂とか全然気にしてないからせっかく隣なんだし聞いてみたいなぁって」


「そうですか。私の話は面白くないですよ。でもそれでもいいのなら」


 と彼女は自分の生まれや誕生日、好きなものから始まり、特になぜグリシスタ教入団したのかを熱く熱く延々と語り通してきた。それはもうすごい熱気で、多分これが信者を探しに来てると言われる所以なんだということを深く知ることになった、というか絶対間違いじゃないなこれ。


「と言うわけなんです。どうですか?入信してくれる気になりますか??」


 俺は大体を聞き流していたが、絶対灰と答えてはいけない質問を俺はいつの間にかされていた。ここは絶対いいえと答えなければならない。


「えっと、天音さんグリシスタ教ってエッチなこと禁止ですか」


 だというのに、俺の口はなんてことを口走ってしまうんだ。これでは、普通に引かれるし、確かにあんなキラキラした目で頼まれると断れづらいけど、もう二度と口をきいてくれないようなことをどうして俺は言ってしまったんだ。言って後悔して、しかし、彼女からの冷たい目と言葉が来るまで目を瞑っていたがなかなか彼女は発言しない。なので、目を開くと、天音はすっごい頬が赤くなっていて


「あ、あのぉ。だ、駄目じゃないですよ」


 と言った。


「入信します」


 俺は高らかに速攻即答で入信宣言をした。もうこの選択に後悔なんてない!!





一応一週間投稿を予定しております。

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