9話 自爆の予感
例の事件からまた数日。俺達は色々ありながらも、結局真神陽子に襲われることなく学園生活を送っていた。
「ねえ、今日私も太一君も部活ないから三人でどっか遊びに行かない?」
詩織は目を輝かせてそう聞いてくる。
「いいよ」
「却下だ」
太一は了承し、俺は断る。当たり前だ。今そんな隙をみせたらろくなことにならない。
「あ、優平君に拒否権はないよ。私がどこかに行こうとしたらついていくしかないからね」
「いや、お前を無理矢理止めれば問題ない」
「私に指一本触れたら警察呼ぶよ?」
「それ警察も困るでしょ……」
太一がそうツッコむと、詩織はそれをサラリと流す。
「まあとにかく優平君は強制ね。いやー、みんな私と遊ぶとトラブルに巻き込まれるからって遊んでくれないから嬉しいよ」
そういう詩織の姿はどこか、寂しそうに見えた。
「……ドンマイ」
こればっかりはさすがに同情する。が、それはそれとして今言うべきではない。
太一も答えにくいのか、黙っている。
そんな中、詩織は自分の失言に気づいたのか慌てて「ごめん」と呟くと、話を戻す。
「それはそれとして、どこ行きたい?」
「うーん……駅ビルでも行きたいかな」
「お、いいね駅ビル。優平君はどう?」
「駅ビルでいいんじゃね?」
俺は適当にそう答えると、あくびをする。正直映画館とかじゃないなら何でもいい。
「じゃあ駅ビルで決まりね! どこの駅ビル行く?」
「某駅でいいでしょ」
「某駅好きだね〜」
「まあ僕の家の最寄り駅だからね」
「お前それ自分がすぐ帰れるからで選んでないか?」
「あ、バレた?」
太一はそう言ってあざとい顔をする。
安心しろ、お前のその顔に需要はない。
「いや、あるでしょ」
「……人の心を勝手に読むんじゃない」
そう軽口を叩きながら俺達は某駅に向かった。
「さて、どうしよっか?」
「んー、とりあえずなんか食べない? 今三時だし」
「いいねいいね。そうと決まれば私に任せて! 近くにいいお店知ってるから」
「おお! じゃあ今回は詩織さんに任せようかな」
……なんだかデパートに行く話からズレているような気がするが、黙っておこう。
「それじゃ行こっか」
俺達は詩織に連れられながら道を歩く。
もし奴が俺達を狙っていてもすぐ対処できるように俺は慎重に辺りを見渡す。
「別にそんなに警戒しなくても大丈夫でしょ。この真っ昼間の人の多い場所でそうそう襲いに来ないよ」
詩織は俺にそう言って微笑む。俺はそれに対して「いや、お前登下校中ほぼ毎日襲われてるじゃん」と返す。
「それはそうだけど……でも人の多いとこじゃあんまり襲われないよ?」
「二人ともここではそういう話やめようか。周りからドン引きされてるから」
「あ……、ごめん」
「すまん」
太一に言われて慌てて辺りを見渡すと、辺りの人が皆こっちを見ている。いくら治安の悪い今でもさすがにこんな話をしてるのはまずかったか。
その後、俺達は人達の目線を避けながら、詩織の言っていた店へと走った。
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