7話 護衛の役割
「あ、優平君。助けに来てくれたんだ」
「……どういう状況なんだ、これ」
「見ての通り、戦闘中だよ。さっさと加勢して」
詩織は赤髪の少女の猛攻をいなしながらそう答える。
「了解」
俺は死霊術でひとまず二人の間に死体の山を滑り込ませて分断し、詩織の元へと走る。
「相手の使う魔法は?」
「主に炎系だね。炎で剣作ったり炎を媒体とした瞬間移動もしてた。結構手練だから気をつけて」
「了解、なら撤退だ」
俺はそう言って詩織の首根っこを掴むと、さっき作った階段を使って逃走する。
「え、なんとか倒す方法考えるんじゃないの?」
「いや、別に相手と戦う必要ねえだろ。俺たちはあくまで無事に家に帰れれば良いんだから。それにこの学校を火の海にする訳にはいかねえだろ」
「それはそうだけど……相手瞬間移動持ちだから一瞬で追いつかれるよ?」
「さすがに人の多いとこ出たら追ってこないだろ」
「どうだろうね。あの子がどこまで君を殺したがってるかによるかな」
「は? 狙いはお前じゃないのか?」
俺は驚いた顔をして詩織にそう聞く。なぜ積極的俺を殺す必要があるんだ。邪魔だからか?
「いや、私と君だよ。なんか恨みがあるみたいだね、君に」
「……あいつと会話したのか?」
「うん。まあその話は後でね。今は逃げること集中しよ」
「了解。飛ばすからついてこい」
俺は死霊術で体と死体を一体化させ、身体能力を強化する。
そして一直線に玄関に向かい太一を抱きかかえる。
後ろには詩織が氷魔法でついてきている。
「すげぇまずい状況になった。詩織が来たらどっか遠くに瞬間移動してくれ」
「え、うん。なんかよく分からないけど分かったよ」
そんな会話をしている間に詩織が来たので俺達は瞬間移動魔法を使って適当な場所に逃亡する。
「ここは……某駅か?」
俺が辺りを見渡すと、そこには人が目まぐるしく歩き回っていた。近くには駅ビルが広がっていて、蛍光灯の光が俺たちを照らす。
「うん。とっさに思いついたのがここだったから」
「なるほどね。いやー、トラブル巻き込んじゃってごめんね、太一君」
「いや、いいよ。詩織さんのせいじゃないし。ところで何があったの?」
「えっとね、実は私一年教室に忘れ物しちゃったんだよね。それで三階まで取りに行ってたの」
詩織は某駅のベンチに腰掛け、氷で遊んでいる。
「それで私が三階の廊下を歩いてる時にね、背後からさっきの子に襲われたんだ」
「ああ、さっき追ってきてた人?」
「そうそう。その後ねじ伏せられた時はどうなるかと思ったよ」
「すまん……俺がついていながら」
俺がそう謝ると、詩織は首を横に振った。
「いや、今回は不可抗力って奴でしょ。まあ対策は立てた方がいいだろうけど」
「そうだな。ところであいつが誰か知ってるか?」
「ああ、あの子は真神陽子っていう一年E組にいる子みたいだね」
なるほど、どうりでセキュリティに引っかからないわけだ。この学校の生徒なら侵入も何もないからな。
「で、そいつがなんで俺に対して殺意持ってんだ?」
「んー、詳しいことは分かんないけど、話の感じからして魔物関係じゃないかな。なんか罪なき命を奪ったものには天罰をとか言ってたし」
「なにその中二病こじらせてそうな発言。女子でも中二病患者っているんだね」
太一がそうツッコミをいれる。確かに言われてみれば中二病っぽい発言ではある。
「魔法使いとしての実力が高い子だと結構こじらせてる子いるよ。例えば優平君とか」
「俺は女性じゃねえし中二病患者でもねえ
!」
「お、いいツッコミだね。でも君死霊術使いの時点で中二病でしょ」
「あー、確かに」
「これしかまともに使える魔法ねえんだよ! 太一も納得してんじゃねえ!」
俺は「話戻すぞ」と言ってこのクソみたいな茶番を終わらせる。
「それで、ねじ伏せられた後どうしたんだ?」
「無理闇脱出して逃げまくってたよ。氷魔法で応戦しながらね。それでしばらくしたら君が来たってわけ」
「なるほどな。……追ってくる様子はなさそうだしそろそろ帰るか」
「そうだね。それじゃまた明日」
太一はそう言ってどこかへ行ってしまった。
「俺達も帰るぞ」
「うん」
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