5話 護衛初日
正直、この仕事をなめていた。護衛といえどせいぜい一ヶ月に一回ぐらいトラブルが起きるぐらいだろうと。そう思っていた。
今日までは。
「なんで登校するだけで三回も襲われるんだよ」
「不死身、不老不死を望んでる人がそれだけ多いんじゃない?」
「たとえ望んでても普通は諦めるだろ!」
「それは不死になれる可能性が低いからでしょ。ほら、昔にも一応実質不老不死の生き物はいたけどさ、彼ら人間じゃないじゃん。でも私は人間でしょ?」
「そういうもんか……?」
正直納得行かねえな。だからってここまで来るのは別の理由もある気がするんだが。
「ま、後は今までほぼ不死かほぼ不老不死の生物のどちらかしか存在しなかったってのもあると思う。その点私は完璧だし、両方の性質を持ってるからね」
「……個人的には魔法の存在によって人が調子乗ってるのもあると思うんだけどな」
「あー、二十年前に魔法が発見される前はもっと犯罪少なかったらしいもんね。それも理由の一つかもね」
俺は相づちを打つと、「こいつとかな」と言ってさっき俺らに襲いかかってきた男を見る。
「それにしてもお前、結構戦えるんだな。正直ここまで強いとは思ってなかった」
先程襲われた時も、詩織は冷静に男の攻撃を避け、氷魔法で反撃していた。
「まあ君に護衛を頼むまでは自分で処理してたからね。嫌でも強くなるよ」
「ここまで強いなら俺に頼む必要あまりなかったんじゃないのか?」
「いや、さすがに一人じゃ捌ける量に限界あるからね。それに君に依頼したのは私が普通に生活できるようにするためだし」
「今の時点で普通に生活は無理だろ」
少なくとも普通の生活をしてる奴はこんなにも襲われないだろ。
「いや、できてるよ。襲われても撃墜できてるからね」
「襲われるの前提かよ」
「それは仕方ないよ。そういうもんだから。運命だと思って諦めるしかないね」
そんなふうに謎の議論を繰り広げているうちに、俺たちは学校に向かう。男が何か叫んでいるがどうでもいい。
「あ、あそこに太一君いるよ」
詩織は近くにいた男に指をさす。
そこにいたのは、俺たちのクラスメイトの相原太一だった。
茶髪でマッシュルームヘアのその姿はまさしくキノコそのもので、餓死しそうな時にうっかり食べてしまいそうな姿をしている。
肌色も割と白っぽいのもキノコポイント高い。
顔はなんか裏切りそうなタイプのイケメン顔といったところだろうか。
後身長も高く、多分2メートル超えている。
「お、優平君に詩織さんじゃん。珍しいね、二人が一緒に登校するの」
「あーそれはね、優平君がボディガード務めてくれるってなったから」
「え? 君まさかあれ引き受けたのか!?」
「……もしかしてお前も話持ちかけられたのか?」
太一は頷くと、頭を掻いた。
「そうそう。まあ僕は断ったけどね。色々と話の雲行き怪しそうだったから」
「太一君たらひどいんだよ! 私が話してる途中に瞬間移動で勝手に家に帰っちゃって!」
「それは詩織さんが人の親と学校買収して同居させようとしてきたからでしょ! あんな詰め将棋みたいなことされたら誰でも逃げるよ!」
詩織あいつ太一にも同じことやったのかよ……。怖えよその行動力。
「太一、お前の判断は間違ってない。よくやった」
「ぐぬぬ、二対一は卑怯だよ!」
「金に物を言わせて無理矢理契約したやつに言われたくねぇよ」
「その金に目が眩んで契約したのだーれだ?」
「グッ……!」
そこを突かれると弱い。
「本当は優平君と太一君と私のお兄ちゃんの三人で護衛させる予定だったのに、応じてくれたの優平君だけだったんだよね。お兄ちゃんには私と一緒にいると命がいくつあっても足りないって断られたし」
「妥当な判断だな」
「だね」
「だから二人揃って同意しないでよ!」
そんな周りに聞かれたら凄く誤解されそうな会話が続いた後、俺達は学校に到着した。
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