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39話 箸休め

 詩織救出作戦まであと2日。俺達はいつも通り学校へと向かった。


 クラスの様子はいつもと変わらなかった。変わっていたことと言えば、詩織がいないことぐらいだ。


 授業はえらく退屈だった。普段以上にだ。特に物理の授業はつまらなすぎて寝てしまった。


 小話を挟むのはいいがそれがクソつまらないのは本当にやめてほしい。余裕で落ちる。


 そしてようやく、昼休みがやってきたので俺は太一と共に校庭で飯を食うことにした。


 「トンネルは思った以上に早く出来そうだ。あの辺でいい感じの公園があってな」


 「それは良かった」


 ……気まずい。とんでもなく気まずい。太一の回答が物凄く返しづらい。頼むからいつもの通りボケてくれ。


 俺がそう考えていると、突然佐山が俺達の目の前に現れた。


 「やあ二人共。元気ないねー」


 「……太一、警察呼べ。不法侵入者だ」


 「待って! あたし実は転校したの!」


 佐山はひどく慌てた様子で手と首を横に振った。


 「そう簡単に転校できてたまるか。それともなんだ、前から転校する予定だったのか?」


 「うん、そうだよ。元々この辺に一人暮らしするつもりだったんだよー」


 「ならなんで真神んちで世話になってるんだよ」


 「どっかの誰かさんが戦闘して住む予定のマンションぶっ壊しやがったからだよー。ね、どっかの誰かさん」


 佐山はこちらを恨めしそうに睨みつけてきた。身に覚えがあるので反論のしようがない。だが、これだけは言わせて欲しい。


 「どのマンションかは知らないが、あれは不可抗力だ。恨むならお前の運の無さを恨め」


 確かに魔物ハンターをしていた時いくつか俺は建造物を破壊していた。そのうちの一つに佐山の入居予定のマンションもあったのだろう。


 「ま、どの道ここに転校するの一ヶ月後なんだけどねー」


 「結局駄目じゃん。早く帰りなよ」


 「大丈夫、ここそんな人いないしー。それにあたしはほら――」


 佐山は体から飴を出すと、身にまとい体を透明化させた。


 「これがあるから」


 「そういやお前そんなのあったな。さっきいきなり現れたと思っていたが、それを使ったのか」


 「その通りー。暇なもんでね、つい来ちゃったー」 


 「そんな理由で来るな! 帰れ!」


 さすがは詩織の幼なじみと言ったところだろうか。マイペースが過ぎる!


 「だってー、詩織ちゃんにせっかく会いに来たのにいないんだもん。暇にもなるさ」


 「? お前俺達の援護の為にここに来たんじゃないのか?」


 「いや、元々は偵察しにこっちに来る予定だったんだよー。あ、そうだ。詩織ちゃん救出し終わったら皆でどっか遊びに行こうよ」


 「なんでもう救出し終わった後のこと考えてるの……」


 「いや、どーせなんとかなるから」

 

 佐山は見事に死亡フラグを立てると、俺達に笑顔で微笑んだ。一体その自信はどこから湧いてくるのだろうか。理解に苦しむ。


 「そもそもね。君達だって知ってるはずでしょ。攻めるより守る方がよっぽど難しいって」


 「それはまあ、そうだな」


 ここは否定しない。する必要も意味もない。


 「それに、詩織ちゃんは一つ、大きな間違いをしてるんだよ。なんだか分かる?」


 「……僕の裏切りに気づかなかったこと?」


 「んー、それは些細な間違いだねー。もっと大っきい間違いだよ」


 「分かんねえな。自分がすぐ犠牲になろうとする考えとかか?」


 「そーいう概念的なものじゃないよ。答えはズバリ! 神谷優平。君を護衛として雇ったことだよ」


 「ああ……そういうことか」


 だんだん佐山の言いたいことが分かってきた。確かにこれは俺自身詩織に一度指摘したことだ。


 「俺の専門は魔物を倒すこと。だから誰かを護るのは専門外。そう言いたいのか?」


 「そそ。だから今回は君の専門だし、きっとだいじょーぶでしょー」


 「……楽観的なのはこちらとしてもありがたいが、過度な期待はしないでくれよ」


 「そんなに期待はしてないよ。あたしは君達のことよく知らないしね。優平君は某動画サイトで戦闘の様子無断で公開されてたから見たけど――」


 「ちょっと待てそれ初耳だぞ!」 


 俺は思わず食い気味に返事をしてしまった。なぜ俺の映像が出ている?


 「あれ、ゆーへい君もしかしてエゴサとかしないタイプ?」

 

 「急にめっちゃ馴れ馴れしくなるなお前。エゴサは基本しねえよ。前にやって魔物愛護団体にこき下ろされてたの見つけたからな」


 「……ドンマイだねー。でもでも、あたしが見た奴は多分君のファンが映像収集して名シーン集にしてた感じだったよ」


 俺にファンなんかいたのか。俺に憧れてどうすんだ。その先にあるのは破滅だぞ。


 「そんなんどうでもいいわ。肖像権的にアウトだわ」


 「ま、とにかくあたしは君達に期待しないし、君達もあたしを期待しない。ただ、やるからには自信持っていこうよー。最初から勝つ自信がなければ勝てる戦も勝てないよ」


 なるほど、確かにそれは一理ある。だからさっきからこいつはやたら自信で溢れているのか。


 「そうだな。俺も無理矢理でも自信持っていくか」


 「その方がきっといいよー。あ、あたしそろそろ行かなきゃ。よーこちゃん襲いに行くのすっかり忘れてた」


 よーこって……ああ、真神のことか。なんか物凄く不穏なこと言ってた気がするが聞かなかったことにしよう。 


 「それじゃまたねー」


投稿遅くなり申し訳ございません

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