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36話 渦巻く罪

 一日中考えてみた。そう、考えたのだ、確かに。だが……正直思いつかなかった。


 敵の正体は分かった。後は詩織の位置だが、それも大体絞れた。恐らく太一の父親の会社の地下だ。


 だが、問題なのはどうやって侵入するかだ。ただ会社に侵入するのも難しいのに、地下に行かなければならないのは厳しすぎる。


「駄目だ……セキュリティが厳しくて侵入すらまともにできねえ」


「うーん……どうしようか、これ。もういっそ直接トンネル掘って地下から行く?」


「あー、それありかもな」


 俺はため息をつくと、太一に同調する。


「まあなにはともあれ位置の特定をしないとどうしようもないからね。その辺は僕と葵さんに任せといてよ」


「ああ、頼んだ」


 太一と佐山なら比較的バレないように偵察しやすいだろう。特に佐山ならカメラを飴で包み込んで操作すれば、本人に危害が及ぶ心配もない。


「それから太一。お前さっき詩織のことを悪人だと思っていたと言ってたな。あれはどういうことだ?」


「あれは……父さんに言われたんだ。小学一年生の頃に。お前と同時期に生まれた吸血鬼がいるって。それでその吸血鬼が世界を滅ぼすからお前が止める手伝いをしろとね」


「……疑わなかったのか?」


 一人の人間が地球を滅ぼせるなんて話、少しぐらい疑ってもおかしくないと思うが。


「魔法がどんどん発達してたから、そういうことができる人もいるんじゃないかって思っちゃったんだ。いや、言い聞かせてたんだ」


「なるほど。それでいざ会ってみたらそんなことできそうもないアホがいたと」


「……アホかはともかくそうだね。まさか普通……ではないけどただ不老不死なだけの女の子だとは思わなかったよ」


 太一はうなだれ、ため息をつく。俺はそれを見た瞬間鉄パイプを奴に向ける。


「ま、そこは正直どうでもいい。……お前の親父、詩織の知り合い殺してたりしてねえよな?」


 俺がそう言った瞬間、気まずい沈黙が流れた。俺はその流れから、奴の答えがイエスであることを悟った。そして、低い声で「殺したのか」と尋ねた。


「……間接的にだけどね。父さんは結構な数刺客送り込んでたから。この前三人で昼食食べたときの襲撃もそうだよ」


「あれもお前の親父の仕業かよ……」


 俺は呆れため息をつくと、続けてこう返す。


「お前、事が済んだら自首しろよ。それなら詩織一人が許す許さないの問題じゃねえからな」


「言われずともそのつもりだよ。たとえ詩織さんが許しても亡くなった人が許すとは限らないって話でしょ」


「そうだな。なんなら一人、聞いてみるか?」


「え、聞くってどうやって……あっ」


 太一はハッとしたような顔を浮かべると、「葵さんか!」と叫ぶ。


「ま、そっとしとくのが一番だし聞くなよ。今のは一種のブラックジョークだ」


「ごめん聞こえちゃったー。正直なところあたしはむしろ殺してくれてありがとうって感じかなー。あのままだと自殺してたし」


「……は?」


 俺は一瞬自分の目と耳を疑った。理由はもちろん、佐山が俺の家の天井に張り付いていたからだ。


「お前忍者みたいなことしてんじゃねえよ……」


 なぜどいつもこいつも人の家に不法侵入してくるのか。心臓に悪いからやめてほしい。


 俺がそう考えていると、佐山が突然ライターを取り出して火を点けた。そして次の瞬間、赤髪の少女とぬいぐるみが日の中から姿を表す。


「お前ら……本当にいい加減にしろッ!」





 


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