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35話 新たな目的

 「ほーん、そりゃまたご厄介な相手だな。それだけ分かりゃ十分だ。そんじゃ佐山。お前の魔法の説明していいぞ」


「いやもうちょい説明聞いてからにしないの?」


 佐山が首を傾げながらそう尋ねる。


「今は必要ねえよ。それよかお互いのことよく信頼できるようにした方がいい。そうでもなきゃ連携なんてできねえからな」


「ふーん、まあいいや。せっかくだし話しちゃうね。結論から言うとあたしの使える魔法は戦闘系じゃないの。どっちかというとサポート寄りかなー」


 佐山はそう言いながら飴のようなものを手から出した。それは自在に形を変え、どんどん大きくなっていく。やがてそれの成長が止まると、それは鳥の形をした飴細工になった。


「見ての通り、あたしの魔法は飴を作ることができるんだよ。もちろんこれで終わりじゃないけどねー」


 飴細工の色が変わったかと思うと、それは空間と同化して見えにくくなった。断じて飴が透明だからではない。飴自体の色が辺りの風景と同じ色になっているのだ。


「これがあたしの魔法の本性だね。この魔法は自由に飴の色を変えられるんだー。使い方としてはこうやって――」


 佐山は大きく息を吸うと、砂糖水を霧にするように吹いた。すると、その霧の中に詩織の姿が見えた。


「幻術っぽいことするのがメインだね。他にも自身の姿を隠したり、飴自体を操って相手に突撃させることとかもできるよ」


「なんだか強いのか弱いのか分からん魔法を使うな貴様」


「正直普通に使えば弱いよ。だから工夫が必要なんだー。こんなふうにねー」


 佐山が指を鳴らしたかと思うと、突如目の前にもう一人の佐山が現れた。


「え、もしかしてこれ僕達が話してる間にもあったの?」


「そーだよ。暇だったからこっそり作ってたの。これ使えば位置偽装とかも可能だよー」


「それ強くない? 上手いこと使えば潜入とかもしやすくなるし今回の作戦の幅広がるね」


「実際強いよ。君や陽子ちゃん、優平君がいない時ずっとキャ……葵ちゃんが私のこと護ってくれてたから」


 なるほど、話の感じだと転生しても得意な魔法は変わらなかったのか。その辺は色々聞きたいところだな。


 それより気のせいだろうか。今一瞬詩織がなにか言いかけてやめたように聞こえたんだが。


「詩織、今のキャって声なんだ?」


「……なんでもないよ。ただ魔力の吸い取られる量が増えたのに驚いただけ」


「……そうか」


 嘘だ。どう聞いても悲鳴ではなかった。なにか隠してるみたいだが放っておこう。多分佐山に関するデリケートな話だ。佐山が一瞬ぬいぐるみの方を睨んでたしほぼそうだろう。


「ま、とにかくこれからよろしくねー。皆」


「ああ。よろしく頼む。……そういやお前、家どうすんだ? めっちゃ遠いんだろ?」


「ああ、適当に野宿するから問題ないよ。飴の家って意外と頑丈でね、ベタベタするのも工夫次第でどうにかなるし大丈夫ー」


「いや駄目だろ。真神、お前んちにこいつ置けたりしないか?」

 

 さすがに今の日本の治安で高校生が野宿するのは危険すぎる。かといえ俺んちに泊めるのは色々とアレだからな。


「……家族全員魔物だがいいのか?」


「構わないよー。泊めてもらえるだけで大喜び」


「そうか。なら来てもらっても構わんぞ。手伝いはしてもらうがな」


「お、ありがとうー! あたし家事全般いけるからどんどんこき使ってくれていいよー」


 佐山はそう言いながらぴょんぴょん跳ね、喜びを表現する。


「決まったみたいだな。それじゃ今日はもう遅いから帰れ」


 俺は月を指差しながら手で二人とぬいぐるみを追い払う。


「太一、お前は俺の家来い。このまま家帰ったら裏切りがバレてたら死ぬぞ」


「そうだね。それじゃあよろしく」


 そして、俺達は家に入り詩織救出作戦について一日中考えた。とにかく時間がない。急がなければ。

 


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