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34話 真実

前回の部分を改稿しました。浅野のボスからのスパイが太一だと優平は思っています。説明不足で申し訳ございません。

「まず少し気になったのが俺に鉄パイプを渡してきたときだ。あの時は素直に受け取ったが、今思えば唐突すぎるし、普段のお前なら俺に何が必要か聞いてから贈るだろ。サプライズとかせずに」 


「それはこのアホもそう思うよ。でも太一君私のこと助けてくれたよ?」


 詩織は先程太一にアホ吸血鬼と言われたことを気にしているのか、一人称がアホになっている。


「んー、その辺も後で説明するから今はスルーさせてくれ。で、次はあの浅野とかいうエセ霊媒師の件だ」


「ああ、貴様等が見事に罠に嵌まったという滑稽な事件のことだな。あれがどうかしたか?」


 真神は意地の悪い顔で嫌味ったらしくそう言う。性格の悪い奴め。こいつの和菓子没収しようかな。


「嫌な言い方するなお前……。あれだってそもそも俺達が霊媒師探してること知らねえと実行不可能だろ。だから妙だなとは思ってたんだわ」


「あ、そこ私も気になってた! うーん、それとさっきの行動考えると太一君スパイなのかなぁ……。でもそれなら優平君と陽子ちゃんでもできるよね?」

 

 ここでまたまた詩織が口を挟む。おそらく慎重に判断したいのだろう。顔は見えないが、声から不安が感じられる。


「それはそうだな。だがまだ疑問点はあるんだ。滝行の時、俺達こいつ誘ってないのに瞬間移動で来ただろ」



「あ、そういえばそうだね。……私としてはあんまり太一君がスパイって信じたくないかな。なんだかんだ色々助けてくれてたのも嘘には見えないんだよね」


「あー、慌てなくても今からそっちも説明すんぞ。つーかそっちがメインだ」


 俺はそう言いながらどら焼きを食べ、緑茶を口に流し込む。さっきから太一が全く喋っていないのが不気味だが気にしないでおこう。


「すまんな佐山。まじで話ついていけないだろ」 


「だいじょーぶ。後でたくさん話させてもらうから今は我慢しとくよ」


 佐山は笑顔でそう返事をすると、ポケットからスマホを取り出していじり始めた。俺はその姿を見て若干罪悪感を覚えながらも話を続ける。


「それで、太一がスパイだとすると今度はそれだと不可解な行動も太一は取ってるんだよな」


「でしょでしょ。そこのとこは反論ないの、太一君?」

 

「……僕に話を振らないで」


 あくまで太一は沈黙を貫きたいらしい。詩織に話を振られても弁解する気はないようだ。


「一つ目は真神に詩織が拉致された時に、太一は普通に詩織のこと助けたことなんだよな。あの時詩織の拘束解かずに浅野とかいう野郎のボスにでも詩織を差し出すこともできたはずなのによ」

 

「あー、私を助けずにそのままどっかに連れ去るってことね。それで優平君には見つからなかったと嘘付けばいいってわけだ」


「そうだな。でも太一はそうしなかった。それが一つ目だな」


 俺はそこで人差し指を立て、一と表す。


「二つ目はなんでわざわざ俺に鉄パイプなんか贈ったかってことだ。盗聴目的なら腕時計とかアクセサリーの類渡すだろ。なのにこいつはわざわざ武器を渡してきた。それが二つ目だ」


 今度は俺は中指を立て、二と表す。


「あ、一つ忘れてた。詩織の護衛依頼を受けなかったこと。受けてたらスパイはおろか隙つき放題だったのにこいつは受けなかった。つっても他の襲撃者を止められる気がしなかっただけかもしれないけどな」


 俺はそう言って薬指を立て、三と表す。


「四つ目。これで最後だ。真神の時も浅野の時も俺のことを助けたこと。これも厄介な護衛なんかさっさと死んで貰った方が都合いいだろ」


 俺は最後に小指を立て、四と表した。



「それで今まで言った事柄を元に考えると、可能性は三つに絞られる」

 


 俺は喋り疲れて来たので、一旦少し休むと、話を続ける。その間、他の三人とぬいぐるみも各自適当に楽な格好をする。


「一つ。太一は仲間のふりをするのに徹していたという可能性。これはありえるが、だとしても仲間である浅野達を裏切ってることを考えると可能性は低い」


 俺は玄関に腰掛けると、話を続ける。本当にこういうのは体力を消耗してだるい。


「二つ。太一はスパイではなく、盗聴魔法も別の奴の仕業という可能性。まあこれはさっきの太一の反応からしてなさそうだけどな」


 さて、問題は最後だ。個人的にこれが正解だと思うのだが……もしこれで二つ目が正解なら恥ずかしい以前に太一に土下座しなければならない。


 俺は緊張を振り払うと、最後の可能性を提示する。


「最後。太一はどちらに着こうか迷った結果両方の味方をするという優柔不断すぎる行動を取った。俺はこれが正解だと思っているが太一、反論はあるか?」


 しばらくの間、沈黙が流れた。俺はその間不安から拳を握り、唇を震わせる。


「ないよ。君の言う通りだ。僕は最初から詩織さんに近づく為だけにあの学校に入学したのさ」


「……なんで? なんでそんなこと? え?」


 詩織はかなりショックを受けているのか、声から混乱している様子が感じ取れる。友人だと思っていた人間から裏切られたんだ。当たり前だろう。もちろん俺もショックを受けている。


「……父さんに認めてもらいたかった。父さんの会社に入りたかった。………………君のことを悪人だと思っていた。その三つが理由だよ」


「そう……なんだ」  

 

 気まずい空気が流れる。元々明るいムードを作ってる二人がこういう状況なのだからしかたない。

 

「あー、とにかくてめえの昔話はどうでもいいから取引だ。後で好きに二人でやってな。俺は知らん」


「取引?」


 太一は首を横に傾げる。


「単純な話だ。お前が詩織救出作戦に協力する代わりに、俺はお前の安全を保障する。そういう内容だ。受けてくれるか?」


「……むしろお願いするのはこっちだよ」


 太一はそう言いながら手を拘束されながらも土下座をした。


「どうか、この救いようのない馬鹿をこき使ってください」


「やめろやそういうの。お前自身くっさい台詞吐いてたじゃないか。友達だろって」


 俺は太一の頭を上げさせると、手錠を外す。もうこれは必要ないだろう。


「それでだ。お前には色々聞きたいとこだが、時間もねえから一つだけ聞くぞ。お前のボスはお前の父親か?」


「うん。相原雄大、大手魔道具会社の社長だよ」





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