30話 深まる謎
俺は作った怪物を暴れさせ、死体どもを吹き飛ばすが、奴等はきりなく湧いてくる。恐らく予め大量に仕込んでおいたのだろう。
だが、だとすると俺等がここに来ることを予め予知でもしない限りこんなの不可能だ。俺達が滝に行ってから用意したのでは絶対に間に合わない。
霊媒師のデマもそうだ。やたらと手間がかかってる。未来予知でもできる奴がいるのか?
……今はそんなこと考えている余裕はないな。とにかくこの死体どもを蹴散らさなければ。
死霊術は死体が生物の血肉にならない限り、死体がどんな形になろうが利用できる。
更に、ネクロマンサーが一度操った死体は、他のネクロマンサーが操作することは難しくなる。
つまるところ対処法が本体を倒すぐらいしかないのだ。我ながら厄介な魔法だな。
俺は死体達を吹き飛ばすと、浅野がどこにいるか探す。だが、見当たらない。
「太一、あいつどこ行ったか分かるか?」
「ごめん、僕も分からない」
太一は周りの死体から逃げながらそう答える。俺はその死体を吹っ飛ばすと、太一を抱え宙を舞う。このままこいつらとまともに張り合うのはまずい。
「死霊術の性質上近くにいるのは間違いないんだが……どこに消えた?」
「状況的にも隠れられる場所は限られるよね。……そこの茂みは?」
「いないな。あ、待てそこの地面怪しいな」
俺は浅野が吹っ飛んだ近くにあった微妙に膨らんでいる地面を指差す。
そして俺はそこに突撃すると、鉄パイプを勢いよく振るう。
「ビンゴだね」
中には浅野が隠れていた。突然の攻撃に対応できなかったのか、泡を吹いて倒れている。
「まったく、苦労させやがって」
俺は浅野を魔法の手錠で拘束すると、太一に真神の元に戻るように言う。
太一は一言「分かった」と返事をし、瞬間移動をして戻る。
俺はそれを見届けたあと、浅野を水をかけて覚醒させる。
「さて、あんたには聞きたいことが山程あるんだ。死にたくなきゃ質問に答えろ」
「おー、好きに質問しな。答えたら死ぬ質問以外なら答えてやるよ」
「詩織がどこに消えたか知っているか?」
「知らんな。俺はただの使い走りだ。計画の内容も全部は知らん。それにしても真っ先に聞くことがそれか」
浅野は笑いながらそう答える。俺は浅野の挑発を無視し、話を続ける。
「……お前の親玉は誰だ」
「あいにくそれは答えられないな。俺も拷問されながら死ぬのはゴメンなんでね」
「答えなかったら俺が拷問して殺す」
「おお、それは困るな。そうだな、じゃあヒントだ。お前が多分知ってる奴だな。それ以上は言えん」
浅野は首を取れそうな勢いで横に振る。この様子だと死んでも答えてくれそうにないな。時間もねえし最後に一つ聞くか。
「お前等の仲間の中に未来予知できる奴はいるのか?」
「一応いるぞ。あのガキを撃ったスナイパーだ。未来予知っつても数秒だけらしいけどな」
なるほど、あいつか。道理で俺の不意打ちにも反応してきたわけだ。
……もしかしたらあの銃撃も最初から詩織を狙ったものだったのかもな。あいつが真神をかばうことを分かってて撃ったとか。
まあでも遠い未来を見れる奴はいないのか。ますます謎が深まるな。
「そうか。それじゃあ俺からは以上だ。後は知らん」
俺は後ろを振り返ると、ちょうど赤髪の少女とその下僕が来たところだった。
「浅野と言うらしいな、貴様。貴様に一つ質問がある。」
「貴様が持っている死体の中に翼に星のマークがある鳥型の魔物はいるか?」
「いるぞ。なんなら今この山のどっかに落ちてるはずだ。それがどうかしたか?」
「それは貴様が殺したのか?」
「ああ、そうだ。そうそう、死体をコレクションに入れようとしたら、崖から落としちまってな。まあその後墓荒らししてたら偶然再会できて良かったぜ」
浅野は悪びれもなくそう答える。それに対して真神は殺意の籠もった目で奴を睨んでいた。
「死ねクズが!」
真神はそう言い放つと、俺の手から鉄パイプを奪い……その後はもう俺は全速力でそこから離れたので知らない。知っているのは俺の元に戻ってきた鉄パイプには血と肉の焦げた匂いが染みていたことぐらいだ。
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