3話 今後
「あ、起きた」
俺はやはり気絶していたらしい。気づいたらベッドにいた。
その横には、詩織が怒った顔でこちらを睨んでいる。手にはリンゴを持っていて、包丁でそれを剥いている。
「まったく、もうちょい考えてから行動してよ。あの後なんかあったらどうするつもりだったの?」
「すまん。一刻も早く行動すべきだとおもってな。どうせ警察もすぐに来ただろ」
「まあそうだけどさ。私よく襲われるからマークされてるんだろうね。あの後の五秒後ぐらいには来たよ。それと……」
詩織は立ち上がると、謎のカードを見せてきた。
カードには「神谷優平を護衛から外せ。さもないとお前の家族全員皆殺しにする」と書かれてあった。
「このカードがリビングに落ちてたんだよね。文章的には宛先は私かな」
「……なんでそんなに平然としてられるんだ? このままだと殺されるんだろ。お前の家族」
「いやぁ、平然となんてしてないよ。むしろめっちゃ悩んでる。君をクビにするかしないか」
「別にクビならクビで構わねえよ。仕方ないしな」
俺は肩をすくめると、ベッドから出ようとする。
「だから君は判断が早すぎるの!」
だが、詩織にそう言われて無理矢理ベッドに戻された。
「一つ気になることがあってね。私達家族は今までも何人か警備員とかは雇ったことあるんだよ」
「警備員? そんなの見当たらなかったぞ?」
「皆やめたか殉職してるからね。今でも時々お墓参りに行くよ」
詩織はそう言ってどこか寂しそうに笑った。どうやら俺はあまり触れてはいけない話題を振ってしまったらしい。
「……すまん。聞いて悪かった」
「いや、いいよ。それで続きだけど、彼らを雇ったときには脅迫状なんて届かなかったんだよ」
「それは……自宅の警備だったからじゃないか? ほら、俺の場合はお前の護衛だったろ」
「それはあるかもね。でも私の予想とは違うね」
詩織は包丁をこちらに向けてそう言う。
正直危ないのでやめてほしい。
「私は君が多少有名人だからなのが問題だと思うんだよ。ほら、君魔法使いとしてはレベル高い方でしょ?」
「……客観的に見ればそうだな」
「だから私に下手に手を出すと、君に潰されることになるわけね。悪い人達からしてみれば」
詩織は切ったリンゴをこちらに手渡すと、話を続ける。
「だから今回こんな脅迫状送りつけてきた、って予想。どうかな?」
俺は身を起こすと、一言「その可能性はある」と答え、リンゴを食べる。
「だが、俺は別に圧倒的に強いわけじゃない。あの時だって幻覚普通に食らってただろ。だからその点は違う」
「えー、そんな謙遜しなくていいのに」
「謙遜じゃない、事実だ。まあでも、少なからず俺をうっとうしいと思ってはいるんだろうな。こんなモノ置いてくぐらいには」
「だよねー。で、君はどうしたい? このまま護衛続けたい?」
詩織は静かに、でもはっきりとした声で聞いてきた。
俺は少し考えた後、こう答えた。
「俺としては続けたい。三億円ほ欲しいからな。でも、そのせいで誰かが死ぬなら俺はこの件から手を引く」
詩織はその答えを聞くと、ニッコリと笑ってきた。
「まあ、君ならそう答えるよね。さて、どうしたもんかな。私達としても五千万使っちゃってるしあまり手放したくないというのが本音なんだけど。……まあ一応現行犯は逮捕されてるし継続しちゃいますか!」
「……お前だけで決めていいのか?」
「いや、駄目だよ。でも私の意見は決まったから。後は家族会議だね。あ、君は出なくていいよ。意見は私が言っとくから」
「了解。じゃあまた後でな」
「うん、またね」
詩織はそう言って部屋から出ると、どこかへ行ってしまった。
それにしても、これから俺はどうするべきなんだろうか。
……お互い話題にはしなかったが、恐らく幻術使いと夜雪一家を襲った犯人は別人だ。男が刃物を持っていたという情報はないし、家の包丁を使った訳でもないようだ。
なら共犯者がいて、共犯者は逃亡したと考えるのが妥当だろう。
そういうことを考えると、本当に俺は
まあいい。それは夜雪一家に判断を任せよう。俺が考えることではない。
俺はそんなことを考えながら目を瞑った。
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