27話 シリアスとピンチはいつも唐突に
「……幻覚じゃないかな。だって前に死体見つかってたんじゃないの?」
太一は首を傾げ、拳を顎に当てる。
「ああ、そうだ。だが、つい先日そいつの墓が荒らされていてな。死体がどこかに行ってしまったのだ」
真神は俺の方を睨むと、後の二人もこちらを見てくる。
「いや俺じゃねえよ。墓荒らしなんてやるわけねえだろ。大体そんなこと俺がやったら今度こそ真神に暗殺されるわ」
さっきからやたら濡れ衣を着せられてる気がする。この世の悪いことは全て俺のせいだと言うつもりか?
「じゃあ誰がなんのためにやったと?」
「……推測だと俺みたいなネクロマンサーがなんかやったとかだろ。真神が今ここで死体を見つけたって話が本当ならな」
「後は私みたいに不死身だったとか?」
「不死身などと言った話は奴からは聞いていない。……言いたくはないが奴はもう死んだ。それは確実だ」
真神は目を閉じ唇を噛みながらそう答える。俺はその姿を見て、罪悪感とほんの少しの同情を覚える。
「もし奴の死体を弄んでいる奴がいるなら殺す。墓荒らしをしているなら尚更だ」
「……言いづらいが人を殺したらいよいよお前処分対象だぞ」
「別に構わん。殺されたところで時間が戻るだけだ。なにも問題ない」
「いや、場合によっては詰むだろ。三十分しか戻れないんだろ」
俺がそう反論すると、真神は鼻で笑った。
そして真神「詰みなどしないわ。逆に襲ってきた奴全員返り討ちにしてくれる」がと俺に言い放ったその時、事は起こった。
詩織が急に真神に覆いかぶさったかと思うと、発砲音が遠くから鳴り、詩織の背中に穴が空いた。
「詩織!」
しまった。完全に油断していた。考えてみればスナイパーがいない方がおかしかったというのに。そうでなくてもここは戦場だ。悠長に話す暇などあるわけがない。
俺は急いで死体で俺達を囲い、続けて撃たれるのを防ぐ。
「痛たたた、これ結構痛いタイプの銃弾だね。陽子ちゃん大丈夫?」
「大丈夫だ、すまない。貴様こそ大丈夫か?」
「大丈夫だよ。どうせ死なないし。あ、ちょっと待って」
詩織はいきなり地面に倒れこんだかと思うと、苦しそうに咳をする。
「ガハッ……こ……れ銃弾に……雷魔法込めら……れてる」
「え、ちょ詩織さん!」
太一が慌てて駆け寄ろるとするが、詩織が手で制する。
「駄目だ……よ近寄っちゃ。君まで痺れ……るよ」
「でも弾抜かないと……」
「いや……、弾ならもう抜け……てるよ。肉体修復の反……動で。でもこれ多分……特定の魔法を強……制使用させ……」
次の瞬間、詩織の体が一瞬光ったかと思うと、詩織はどこかへ消えてしまった。