敵襲、そして逃亡
結果あの後真神と太一は、詩織に押し切られ、滝行をさせられていた。
「よくもやってくれたな、ネクロマンサー」
滝行を終えた真神は、真っ先にそう俺に言い放った。
「いやなんで俺なんだよ。文句なら無理矢理やらせた詩織に言え」
「無理矢理なんて酷い言い方するなぁ。私はただ勧めただけだよ?」
「俺には一種の洗脳にすら見えたんだが気のせいか?」
「気のせい気のせい」
詩織は目を逸らすと、手のひらを左右に振る。
「俺の目を見て話せ!」
そんな茶番を俺達が繰り広げていると、横から太一が声をかけてきた。
「あのさ、雨降ってきてない?」
「……降ってるな。まあ、魔法で防ぎながら帰れば大丈夫だろ。それにお前は瞬間移動で帰れるだろ」
「あ、そっか。まあこういう場所に来る機会なんてめったにないしもうちょい満喫してから帰るかな」
太一はそう言って小屋にあるソファに寝転ぶ。詩織と真神もそれに続けてベッドに潜り込む。どうやら皆ダラダラする気満々のようだ。滝行を少しやりすぎたか?
「お前等……明日も学校あるんだぞ?」
「大丈夫。明日休みにさせるから」
詩織は手をヒラヒラさせながらそうとんでもないことを言う。
「お前が言うと冗談に聞こえないからやめろ」
俺がそう返すと、詩織はふふっと笑って誤魔化してきた。まじで休みにするんじゃないんだろうな。不安になってきたぞ。
その後、詩織達は昼寝をし、俺は暇つぶしに本を読んでいた。
正直、この状況は俺にとってあまりよろしくない。理由はもちろん暇だからだ。寝たいのは山々だが全員が寝るのは襲撃者のことを考えるとまずい。
俺がそんなこと考えていると、後ろから誰かに肩を叩かれた。
俺が振り返ると、そこには服と髪を乱しに乱した太一が立っていた。
「なんだ?」
「いや、暇だからちょっかい出しただけ」
その言葉を聞き俺はため息をつく。太一はそれを見てゲラゲラと笑い、俺に更に悪戯をしてくる。よっぽど暇なのだろう。
「お前なぁ……。そんなに暇ならあの二人起こしてくれよ。ぶっちゃけ俺も早く帰りたいんだ」
「え、嫌だよ。詩織さんはともかく陽子さんは起こしたら食われそうだし」
「お前真神のこと熊かなにかだと思ってないか? まあ気持ちは分からんでもないが」
俺は頭の中で真神を無理矢理起こした時のことを思い浮かべる。そこには赤髪の少女が俺に斬りかかってくるのが見えた。うん、死ぬな。
「詩織さんは僕起こすから陽子さんは君が起こしてよ。僕はまだ命が惜しいからさ」
「いや俺だって命は惜しいわ。お前いけや」
俺が太一をベッドの方へ押しやろうとした瞬間、俺がさっきまでいた場所に銃弾が通過した。
一瞬の静寂が流れたのち、俺達はなりふり構わず二人を叩き起こす。そして、起きた二人に状況を簡単に説明し、俺達は急いで小屋から逃げ出した。
しかし、いつの間にか結界が張られていて、俺達は山を降りる途中で見えない壁にぶつかった。
更に後ろを振り返ると、例によって銃を持った男達に囲まれていた。
俺は心の中でまずいと連呼しながら作戦を練る。さてさて、これからどうしたものかな。
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