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22話 十字架を背負う者達

 俺がその発言をした時、詩織の動きが止まった。顔は真顔になり、こちらを驚いたような顔で見つめてくる。


「あー、できれば触れてほしくなかったかな、そこは。でも仕方ないね、絶対いつか聞かれると思ってたし」


 詩織はため息をついて、観念したような顔をすると、ゆっくりと話始めた。


「ざっくり言っちゃうと、私は家族からハブられてるんだよ。近くにいると死人が出るからね」  


 詩織はそこまで言うと、ベッドに寝っ転がった。俺はというと、ヘタレすぎてなにも言えずに黙っていた。


「私が今まで間接的に殺してきた人数何人だと思う?」


「二人……とかか?」


「不正解。答えは十三人。ボディガード三人に父方の祖父母二人。それから一番上の兄の初恋の相手一人。妹の親友二人。私の親友四人。最後に私の弟一人。これが私が今まで奪ってきた命だよ」


 詩織は枕に顔を(うず)めると、消えるような声で正解を言う。俺はどうしていいのか分からないまま、ただただ黙ることにかできなかった。


 ここで太一ならなにか上手いこと励ませるのだろうか。最高に甘ったるいことを言って、傷を癒せるのだろうか。分からない。分からないが少なくとも俺にはその力はない。


 俺が最初に思い浮かんだのは、「お前が殺したわけじゃない」というありきたりなフレーズだった。だが、詩織はそんなことなど百も承知だ。いや、正確には、分かってはいるがそれでも自分が殺したようなものだと思っているのだろう。


 「だからさ、家族が私を怖がったり、憎んだりするのも無理はないんだよ。誰だって死神は嫌いでしょ」


 詩織はそう言って更に枕に顔を(うず)めると、こちらに背を向ける。


 俺はどうすればいいのだろうか。「お前は悪くない」とでも言えばいいのか? それとも「辛かったな」と同情すればいいのか? いや、どっちも違うな。これは懺悔みたいなもんだ。今はただ、詩織の話を黙って聞いてるのが最善だ。


「逆によく家までいさせてくれるよね。私なら追い出してるよ。いるだけで危ないもん」


 詩織はそのまま勢いで話続ける。


「友達なんて皆死ぬか逃げるか自分から離れるかの三択だから。私が周りからなんて言われてるか知ってる? 厄災の子だよ。ま、いいんだよ。私別に友達なんて欲しくないし」


「……」


 今、詩織は間違いなく嘘をついた。友達が欲しくない? 大嘘つきが。本当に一人がいいやつは最初から周りに壁作るんだよ。


 入学式皆と仲良くしてたのはどこのといつだよ。隣の席の奴を金で釣ってまで護衛人にさせたのは誰だよ。自分を拉致した相手を家に連れてきたのはお前以外にだれがいるんだよ。


 結局お前はどうしようもないぐらいお人好しで、寂しがりなんだろうが。


 俺はそう指摘しようとするのをぐっとこらえ、黙って詩織の話を聞く。


「私が皆を護れるぐらい強かったら良かったんだけどね。でも私は体術はともかくこの氷魔法を完璧に使いこなすことができてないんだよ。今もね」


 詩織はそう言ってこちらに近づくと、寂しげに微笑む。それに対して俺は相変わらず相づちを打ち続ける。


 正直な所、詩織の氷魔法の熟練度は俺の目から見れば十分だと思っている。ここ数週間、詩織の動きを見てみたが、特別問題は見られなかった。


 むしろ、機動力や冷静な時の判断力は俺より上と言っていいぐらいだ。


 多少火力が低めな所や、一度パニックに陥ると中々立ち直れないことはあるが、許容範囲だ。


 それにそもそも今詩織の周りを護るのは俺であって、彼女ではない。


 ここの部分はさすがに伝えた方が良いかなと思い、俺はその旨を詩織に伝えた。


 すると詩織は首を横に振り、「いや、まだこれじゃ周りを護るのには全然足りないよ。それに私自身が強くないと結局駄目なの」と返事をした。予想はしていたが、やはり詩織自身は納得がいかないらしい。


「所詮一人の人間にできることなんて限られてんだ。あんま気にすることねえよ」


 俺は続けてこう返すが、それでも詩織は首を横に振る。多分理屈ではないのだろう。


「……よし分かった。今度俺と一緒に魔法の修行しないか?」


「え、いいの?」


 俺がそう提案した途端、詩織はベッドから跳ね起きて、目を輝かせる。


「まあ俺もそろそろ修行したい気分だったからな。それに詩織が強くなるのはこちらとしても好都合だ」


「ありがとう。それじゃお願いしようかな」

 

「つってもちんたら修行してる暇はねえから速攻で効果あるやつをやるぞ。霊媒師探しの件もあるからな。」


「りょーかい!で、なにやるの?」


「滝行」


「え?」


「だから滝行」


「ええええええええええ!?」

次回修行回です。多分一話で終わります

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