17話 和解への道 その2
「うん、なんでよりにもよって転移先が俺の部屋なんだ?」
俺達が瞬間移動で詩織の家に戻ってきた時、そこは俺の部屋だった。詩織は勝手に俺のベッドで寝ている。俺は基本床で寝ているので正直抵抗感はあまりないが、それでも少し気になる。
真神はというと部屋の隅でこちらを睨みつけている。というよりかは詩織を睨んでいるな。
「君の部屋なら燃えても問題ないでしょ」
「問題しかねえわ。護衛にも人権を寄越せ」
「まあまあそう硬いこと言わずにさ。さ、陽子ちゃん釈放だよー!」
「ちょっおま勝手に鍵を外すな!」
いつの間にか詩織は真神の方へ移動し、手錠を外していた。だが、真神は魔法を使う様子はなく、じっとしている。
「うん、二人とも予想通りの反応だね。それじゃ、始めよっか」
「始める? 何をだ?」
「陽子ちゃんの歓迎パーティー!」
「ああなるほど、歓迎パーティーか。それじゃ早速準備しないとな……じゃねえだろ!」
俺は驚きのあまり思わずノリツッコミをしてしまった。こいつ……まさか真神を……。
俺がその先を考える前に、詩織が結論を言う。
「陽子ちゃん、私の護衛をやってもらえないかな。もちろん霊媒師探しは手伝うしお金も払うから」
「……この男と一緒にか?」
真神はそう言うと、俺を睨みつける。そんな真神を気にすることなく詩織は続ける。
「うん。まあでも大丈夫。……陽子ちゃん、一つ質問いいかな?」
「なんだ」
真神は不機嫌そうな顔でそう答える。
「陽子ちゃんさ、優平君を憎んでるのって大切なお友達を殺されたからだったりする?」
「……ああ、そうだ。それがどうした」
「その子の特徴は? いつ亡くなったの?
」
「鳥型だ。翼のの部分に星がついてる。それから亡くなったのは十日前だ」
「なるほど。じゃ、優平君、君が持ってる鳥型の魔物の死体を出してくれるかな?」
「あ、ああ」
俺はなんとなくだが、詩織のしたいことが分かってきた。が、理解はできない。
なぜこんなことをわざわざするのか、それが理解できない。
俺は一気に死体を放出すると、「出したぞ」と言って後ろに下がる。
「ありがとう。で、この中にいる? 陽子ちゃんのお友達」
真神はしばらくの間死体達を見回った後、ポツリと「いない」と呟いた。
「うん、ならお友達殺したの優平君じゃないね。優平君の日記には十日前に鳥型の魔物を殺したって書いてなかったし、殺した魔物は全部持ってるって書いてあったから」
なるほど、誤解をしていた。俺は詩織が真神の友人の死体を真神に渡そうとしているのかと思っていたが、どうやら違うらしい。俺の無実を証明しようとしていたのか。それからサラッとまた人の日記をガン見したという事実が流れているが、今は無視しよう。
「……なら誰だと?」
「さあ、それは分からないよ。ただ私は優平君と陽子ちゃんの家相当離れてるし本当に優平君が殺したのかなって思って確認してみただけ」
「……どの道この男が我が同胞を殺し回っていたことに変わりはないだろう?」
「それはそうだね。でも少しは恨み減ったでしょ?」
「……まあ、そうだな。今すぐ殺したいのが視界に入らなければいいぐらいにはなった」
「でしょ。だからさ、一時的でいいから協力してくれないかな」
詩織は上目遣いで真神をみると、真神は少し悩んだ顔をしたあと、「金はいらん、それより貴様の血を寄越せ」と言った。
「契約成立……ってことでいいのかな?」
「そうだ。どの道私に拒否権などなかろう」
こうして真神が仲間? になったわけだが、誰か一人、忘れている気がする。
……そうだ、太一がいねえな。たしか詩織がなんかやることがあるからとか言ってどっかに消えたって話てたな。電話するか。
俺は二人を置いて部屋を出て、太一に電話をする。
「ん、なんか用?」
「お前、今までなにやってたんだ? やらなきゃいけないことがあるって聞いてたが」
「ああ、あれはね武器を取りに行ってたんだよ。万が一真神陽子が想像以上に強すぎたとき用のね」
「なるほど。ところで、今どこにいる?」
「今は一人寂しく駅のホームにいるよ。勝ったんでしょ、真神陽子に」
「一応な。なんか今その噂の人物を護衛にしようとしてるアホがいるが問題ない」
「あー、うん大体察した。ま、お互い無事ならなんでもいいや。もう他に要件ないなら切るね」
「オーケーじゃ、また明日」
俺はそう言って電話を切ると、部屋に戻る。すると、詩織と真神が二人して勝手に人の部屋でポテチを食べていた。どうやら俺はまだまだ寝られそうにないらしい。
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