16話 和解への道
「……貴様、勝手に見たのか! そういえばそこのネクロマンサーの日記も勝手に読んでいたな。貴様、プライバシーというものを知らないのか!」
「知ってるけど陽子ちゃんたち両方とも目に入るところ置いてたからつい気になって見ちゃったんだよ」
「ちょっと待て。俺のあの日記を見たのか……?」
初耳なんだが。内容が内容だけに見られたら恥ずかしい以前に凄く嫌なんだが。
「あっ……ごめん、机の上に置いてあったからつい……」
詩織は小声でそう俺に謝ってくる。駄目だこいつ。見てやがった。
「……もう二度とお前が部屋に居るとき外出ないわ」
俺はこれ以上ないくらい深いため息をつき、そう呟く。
「本当にごめん……。まさかあんな内容だと思ってなくて……」
「どんな内容でも人の日記を読むな! 大体その様子だと真神にも話しただろお前」
「うん……」
「真神、やっぱこいつあげるわ。煮るなり焼くなり好きにしろ」
「えっちょっ」
俺がそう言って詩織を真神の方へ押しやると、詩織は相当慌てているのか暴れまくる。真神はというと、やはりこちらも怒って暴れまくる。まさに地獄絵図だ。
それからなんやかんやあって詩織が「そろそろ話戻していい?」と言って強制的にこの地獄を止めると、ゆっくりと話始める。
「それで、陽子ちゃんの今後だけど……私としては拉致の件は無罪放免にしようかなって思ってるんだけど、どうかな?」
「特に異論はない。そもそもそれは詩織が決めることだしな」
「待て、私は納得していないぞ、貴様等。そうやって罪を自分の都合で変えるな。貴様等が今まで返り討ちにしてきた人間共にも罪を償わせたのだろう? なら私にも同じことをしろ」
こいつクソ面倒くさい奴だな。大人しく見逃して貰えばいいのに。俺がそう思っていると、詩織がこちらに目配せをしてくる。どうやら顔に出ていたらしい。
「別に私相手がそれなりの事情があるなら誰でも警察に突き出さないよ? それに陽子ちゃん生き返らせたい生き物いるんじゃないの?」
「ふん、生物が生き返るわけがないだろう。スマホの履歴は……気の迷いと言う奴だ」
真神は顔を逸らしながらそう答える。恐らく恥ずかしかったのだろう。その調子で普段の言動にも恥じらいを持ってほしい。
「いや、まだ分からないよ。もしかしたら生き物を蘇らせる力を持った生き物もいるかもしれないしさ。ほら、そこで蚊帳の外状態になってる犬とかさ」
「……死霊術は死体を道具として使う魔法だ。なにかを蘇らせるのは専門じゃない」
俺は詩織の煽りを無視して話をする。
「そんな……本当にどうにもできないの?」
「俺にはできないが、霊媒師に頼めばいけるかもしれない」
「そんなのいるわけなかろう。人間の学校で霊媒魔法など教わらなかったぞ」
真神は呆れた顔でそう返し、気だるそうに寝転ぶ。
「そりゃ教えてねえからな。クレーム来るんだとよ。そういう魔法は。現に俺も死霊術は学校外で習得してるしな」
「ふん、人間なら人間らしくそういう汚らしい魔法こそ習うべきだろう」
「陽子ちゃん今その汚らしい魔法に頼ろうとしてるの分かってて言ってる?」
詩織の言葉が見事に真神に突き刺さったらしく、真神はブツブツと呟く機械となってしまった。
「ま、とにかくまだ諦めるのは早いって話。だからさ、まだ捕まる訳にはいかないでしょ?」
「…………」
「ま、陽子ちゃんが自首しようとしたら私どうすることもできないし、最終的な決断は陽子ちゃんに任せるよ」
詩織はそう言って真神を持ち上げ、山を下っていく。
「待て、私をどこに連れて行くつもりだ!」
「え、私の家。ほら、今手錠外して襲われたらひとたまりもないからね。だから一回連れて帰ろうかなって」
「ふん、そういうことなら構わん、連れて行け」
「凄え上から目線だなお前……」
そうして俺達はある程度山を下った後、詩織の瞬間移動で詩織の家に戻った。
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