15話 一番異常なのは誰?
某弁護士もびっくりの壊れ方をした彼女は、そのまま舌を切って自害しようとしていた。
俺は慌てて真神の口に死体を滑り込ませ、死ねないようにする。
「貴様……! き、さ、ま…………………………………………!」
真神が凄い目でこちらを睨む。無理もない。仇にこうして負けたのから。
「貴様、なぜ殺さない! ……まさか私が人型だから殺さないというのではあるまいな?」
「……今の俺は魔物ハンターじゃない。護衛人だ。そして契約内容に殺しは含まれてない」
「だからなんだ! どうせお前らは人外なら瞬殺してるだろう! そのくせ人型ならたとえ人間に危害を加えていても殺さず仲間にするとか言って自分の都合の良いようにするのだろう!」
そう言う彼女からは、その理不尽に対する怒気が感じられた。
「……なにに影響を受けたのかは知らないが、実際のところ仲間にするという点以外は結構当たっている。人間のエゴという奴だな。例えば俺達は猫を食べない。というより食べれない。食べたら非難の嵐だからな。そういうもんだ」
「だから異形の魔物は皆殺しか! とんだ屑の集まりだな、人間という生き物は」
「……俺達人間はそういう生き物だ。程度はあれど基本的に自分勝手に生きてる」
「でもそこもいいんだよね。そういう愚かしさもね。ほら、バラは棘があるからこそあそこまで美しいじゃん?」
「なっ……詩織、お前いつの間に!」
突然詩織の声がしたので俺は慌てて声の方向を見ると、そこには服装が乱れまくった詩織が立っていた。氷魔法を使って来たらしく、詩織の後ろの道に雪が積もっている。
「どうも、人間と魔力でできた吸血鬼です。以後お見知りおきを」
「き、貴様どうやってあそこから逃げ出したというのだ!」
「ん、そりゃ助けてもらったに決まってるじゃん」
「ならなんでお前ここ来てるんだよ! 帰れ帰れ!」
まじでなんで来たこいつ。俺が真神倒した後だから良かったが、倒してなかったらターゲットが増えただけだぞ。
俺がそう言うと、詩織は頬を膨らませて怒った。
「え、やだよ。大体私太一君に頼まれたから来たんだし」
「あ、そうだ、太一はどうした?」
「んー、なんかやることがあるって言ってどっか行っちゃった。」
「貴様等私を無視するな! さっさと私を殺せ!」
しびれを切らしのか、真神は怒って声を荒げ、暴れた。それに対し詩織が笑いながらこう返す。
「えー、でも殺したら陽子ちゃんの力で時間戻っちゃうんでしょ。なら殺すメリットないよね?」
「え、こいつ死に戻り能力持ちなのか?」
そんなの初耳だが。こいつ俺のいないとこで話めっちゃ進めてくるな。
「お、優平君察しがいいね。詳しい説明は今は省くけど、この子が私を狙ってたのもそれが理由の一つだね」
……説明せずともなんとなく分かる。
恐らく死に戻りが無限ループ化してるからそれを止めたいのだろう。
詩織はそう言うと、今度はこちらを凄い形相で睨んでいる陽子に話しかける。
「あ、そうだ陽子ちゃん。さっきは本当にごめん! お詫びと言ってはなんだけど、これ、私の心臓」
詩織はそう言うと手に持っていたハンドバッグから毒々しい赤色をした、肉の塊を取り出す。
「さっきって……お前一体なにやってたんだ?」
「後で説明するよ。それより今はこの子の今後が問題でしょ?」
「今後もなにもあるか! 私は不死の力を手に入れこの忌々しい体質から逃れる。そして貴様等人間を滅ぼす。それ以上の目的などない!」
「そうかなー。ならなんで陽子ちゃんのスマホの履歴に死者蘇生のやり方が書いてあるのかな?」
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