14話 ネクロマンサーVS炎使い
俺は今、真神陽子に指定された鹿岩山の頂上へと向かっていた。
……いつか、こうなると覚悟はしていた。あんな職業をやっていたんだ。魔物に恨まれるなり返り討ちにあうなりして早死にするのは目に見えていた。実際、あの職業には高齢者はほとんどいない。
だから正直、それは仕方ないと思っていた。だが、問題は詩織だ。あいつは無事だろうか。なにか拷問とかされてないだろうか。
真神の俺に対する憎悪はとてつもない。もしかしたら、その憎悪が詩織に行くこともあるかもしれない。前にそういうのは慣れてるとは言っていたが、やはり不安ではある。
そうこう考えているうちに俺は頂上に着いた。もうすでに真神は来ていたらしく、しっかりと待ち構えていた。
「よく来たな、魔物殺し。せめて苦しまぬように一撃で葬り去ってやる」
彼女はそう言うと、どこからか西洋剣を取り出し、俺に斬りかかる。
俺は慌てて後ろに引き、距離を取る。
「貴様、なぜ避ける!」
「……非常に自分勝手なのは分かってる。でも、俺も死にたくはない。殺すならせめて戦って殺してくれ」
「なるほど、なら今すぐここで無様に死ね!」
真神は今度はまともに食らえば消し炭になるような威力の炎をぶっ放してきた。
俺はそれを死霊術で出した熱耐性の高い死体を出してなんとか凌ぐと、こちらも水魔法使いの魔物の死体を使って水で反撃する。
俺にとってが厄介なのは陽子の炎を媒体とした瞬間移動だ。それさえ潰せればまだ勝ち筋が見える。
真神は水をモロに食らった。だか、まったく効いている様子はない。辺りの炎も鎮火できている様子はなく、俺は思わず目を見開く。
「残念だったな。私の炎は特別だからな。燃料がある限り消えてもすぐ蘇るんだ」
クソッ、そんなのありかよ。
「さて、無駄な足掻きはやめてさっさと死にな!」
またしても真神は俺に何回も斬りかかってくる。剣は炎を纏っていて、とても避けづらい。
俺はなんとか上手く死霊術を駆使して逃げ回るが、どんどん追い詰められていく。
そもそも俺と奴では相性が最悪なのだ。
俺の持っている死体のほとんどは燃える。魔物といえど土に還らないこと以外は普通の生き物とほとんど同じだ。
加えてこの環境。まさに燃やし放題じゃないか。
正直、状況はめっちゃ厳しい。このままだと俺は恐らく死ぬだろう。奴の予言通りに。だから策を考えなければ。この状況を打開する策を!
「ちょこまかと逃げやがって。やはり貴様はその程度の存在なのだな」
考えろ、なにかないか。……一瞬隙さえ作れれば多分後は死霊術でどうにかなる。
問題はその隙をどうやって作るかだ。
死体で目眩ましをするか? いや、そんなので怯むとは思えない。それに、無闇に魔物の死体を使えば彼女を逆上されるだけだろう。ならどうする?
……そうだ。ここは山。そしてたった今、目の前に少女によって大量の命が奪われているじゃないか。これと魔物の死体で、上手く行けば隙が作れるんじゃないか?
俺は、燃やされた大量の葉っぱや木の枝、虫などに触れ、吸収し、それらを合体させて勢いよく発射する。
もちろん真神はこれを消し炭にしようとする。ここまでは想定通りだ。そこで俺は魔物の死体と肉体を合体させて宙に舞うと、真神自身が放った炎を利用して、上手く真神の後ろに回り込む。
俺が勢いよく真神を殴ろうとすると、真神は慌てて瞬間移動で距離を取る。
そして俺は魔物の瞬間移動先にとっておきの死体を出すと、そいつに俺は魔力を込める。
その死体は、俺があの忌々しい電話がかかってきた日に殺した魔物――カエル型の強力な水の魔法を使ってきた魔物――
勢いよく辺り一面に水が広がり、一時的に山は湖へと姿を変える。
このチャンスを逃がす訳にはいかない。
俺はそのまま水中で真神にボディブローを食らわせると、羽交い締めにする。
真神は炎を再点火させるが、一瞬で火は消えてしまう。永遠に燃え続ける炎ではなくて本当に良かった。もしそうなら俺は完全に詰みだった。
俺は更にこの時の為……ではないが、用意していた魔法を封じる手錠を真神に嵌め、戦闘不能にする。
「クソックソックソックソックソックソックソッ!」
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