12話 今日の世界は雨模様
「……お前、真神陽子か?」
「質問に質問で返していいなんて一言も言ってない。いいから質問に答えろ」
どこかマッチョがたくさんいる漫画で聞いた台詞が聞こえてきた。
「……美味いと思ったことはない」
「そうか、そうか。じゃあ何故貴様は今も生きている?」
「……分からない」
「ハッ! 無責任な奴め。まあいい、どの道貴様の人生は本日をもって終わるのだからな」
「……聞いてた通りマジで中二病患者だね」
どうやら電話の内容が聞こえていたらしい。太一はそう感想を俺に言ってきた。
「今は頼むから黙れ太一」
正直俺も少しそう思ったが、今は真面目な話をしているんだ。邪魔をしないでくれ。
「そうそう、貴様。私が真神陽子かと聞いたな。その質問に対する回答はイエスだ」
駄目だ、太一のせいで余計中二病っぽく聞こえてくる。
俺は共感性羞恥で顔を若干赤くしながら真神の話を聞く。
「そうか。それで真神、俺になんのようだ。壺なら買わねえぞ」
「今日の夜十時、お前一人で鹿岩山に来い。警察に通報するならお前とお前の知り合いの家に火をつける」
真神は俺のブラックジョークを完全にスルーして話し続けた。
「それと詩織にもだろ」
「ふん、もう状況が理解できてるようだな。だがあいにく彼女を拐かしたのには別の理由かあるのだよ。」
そこで突然横から笑い声が聞こえてきた。どうやら太一が笑っているらしい。
「この状況で笑えるとか正気か?」
「いやだって真神さん面白いんだもん」
……もうこいつは放っておこう。気にするだけ時間の無駄だ。
俺は再び電話に顔を近づけると、真神に話しかける。
「不老不死になるのが目的なのか?」
「さあ、どうだろうな。貴様に答える義理はない。ただ一つ言えるのは、この女が無事に帰ってくることはないってことだ」
「そうか。最後に一つだけ質問いいか?」
「いいわけないだろう、と言いたいところだが特別に許可しよう。冥土の土産と言う奴だ」
「お前は魔物なのか?」
俺がそう言った瞬間、電話が切れた音がした。どうやら図星らしい。
「あ、電話終わった? それじゃ早速警察に通報しようか」
「……お前電話の内容ちゃんと聞いてたか?」
「聞いてたよ。でも誘拐って大抵警察に電話した方がいいって聞くじゃん」
「いつの話だそれ。今の時代警察は深刻な人手不足だぞ。今から通報しても間に合わねえし下手したら家焼かれるぞ」
詩織の件で通報しても多分アウトだろうし、下手に真神を刺激するのは避けたい。
ここは太一を説得しよう。
「じゃあどうするのさ。まさか本当に一人で突っ込むと?」
「そのまさかだ。勝手についてくるなよ。これは俺の問題だ」
「はぁ……ここにも中二病患者いたよ」
「誰が中二病だよ」
「君だよ! これは俺の問題だとかギザっぽいこと言って! 自分一人で抱えんなこの中二病!」
俺は思わず面食らった。太一がここまで声を荒げるとは思ってなかったからだ。
「だいたい君いつも僕達のことクラスメイト扱いじゃないか! 普通に友達だろ!」
「……すまん」
俺は太一の剣幕に圧倒され、まともに返事ができなかった。
「頼れる時は頼ってよ。僕にできることなら何でもするからさ」
「あ、ああ。すまん、それじゃあ詩織をお前は探してくれないか。さすがにお前と二人で真神に会うのはまずい」
「謝らなくていいんだよ、今回は。詩織さん探せばいいんだね。分かった、全力を尽くすよ」
「場所は多分八王子のどこかだ。それ以上は分からない。よく見えなかった」
「それで十分だよ。後は上手いこと魔法でどうにかする」
「……ありがとう」
「今なんか言った?」
「いや、何も」
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