11話 笑えない冗談
その後、詩織は俺達を着せかえ人形のようにして遊んでいた。
「お、これとかも良くない?」
俺は、制服から紺色で無駄にデザインの凝っているTシャツを着替えさせられていた。
「微妙に似合ってなさそうな感じするが」
「どうだろ。私もあんまファッションセンス自信ないんだよね」
「ならなんで君が選んだの……」
そういう太一も白色の背伸びしたい中高生が着てそうな服を着させられている。
「……そういえばさっきから俺達にばっか服試着させてるけどお前は着ないのか?」
「私はもう最近結構買っちゃったから。それに私は割と他の人の服選ぶ方が楽しいし」
「なるほど、そういう楽しみ方もあるのか」
俺はあまりそういうことをしないので参考になるな。
「ま、私もせっかくだしなにか着ようかな」
詩織はそう言ってどこかから服を持ってくると、試着室へと向かう。どんな服かは詩織の背中で隠れて見えなかったが、絶妙にダサい服じゃないことを祈っておこう。
「……詩織さんって割とお母さんが買ってきそうなタイプの服着せてくるよね」
「あー、確かにな。すげぇしっくりくるわ、その表現」
俺は激しく首を縦に振る。詩織には悪いが彼女には少なくとも男モノの服のセンスはないと思う。
じゃあ俺があるのかと聞かれたら、それはまた別の問題だが。
そうこうしているうちに、着替えが終わったらしく、詩織が出てきた。
詩織は透き通ったような水色のワンピースを着ていた。
「どうかな?」
「あー、いいんじゃね。似合ってると思うぞ」
「うん。詩織さん結構水色似合うね」
「ふふ、ありがとう」
詩織はニッコリと笑うと、「それじゃせっかくだしこれ買おうかな」と言って試着室に戻っていった。
「さて、それじゃ僕達も着替えようか。君その服買う?」
「買わねえ。金がない」
「そっか。ちなみに僕はこの服買うよ
。部屋着には使えそうだし」
「いや買うのかよ……」
その後俺達は洋服屋を出ると、適当に色々な店を見て回った。
「それじゃそろそろ帰ろうか」
太一はそう言いながら店を出ようとする。が、詩織が「ちょっとトイレ行きたいから待ってもらってもいい?」と言って太一を引き止める。
そしてそのまま十五分弱経過しても詩織は戻ってこなかった。
「遅いな。GPSの位置確認しておくか」
心配になった俺はスマホで詩織の位置を確認した。すると、一瞬どこか遠く離れた場所に表示されたかと思うと、反応が消えた。
「……クソったれ!」
すべてを察した俺はそう叫ぶ。やはり護衛というものは後手に回りがちである。とはいえ、二回も詩織を危険な目に遭わせてしまったのは重罪以外の何物でもない。
冷や汗が止まらない。呼吸も少し乱れている。深呼吸だ。とりあえず落ち着かなければ。
「大丈夫かい、優平君? お腹痛いなら待ってるけど」
何も知らない太一が心配そうに話しかけてくる。俺は手短に太一に状況を説明すると、さっさと家に帰るように言う。
「分かったけど……君はどうするの?」
「俺は警察に通報して詩織を探す。一瞬だけGPSが反応したからそれで大体の位置の検討はつく」
「それなら僕が瞬間移動で連れて行くよ。あんまり遠くにはワープできないけどある程度まではいけるし」
「……いや、大丈夫だ」
正直ありがたい提案だが、できるだけ太一を危険な場所に行かせたくない。
そんな会話をしていた時、突然電話が鳴った。番号は詩織の携帯電話の番号だった。恐らく犯人が奪い取ったのだろう。
「初めまして、魔物殺し。命を奪って食べる飯は美味しいか?」
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