10話 どいつもこいつも
詩織の言っていた場所は、あからさまに女子が行っていそうなカフェだった。
俺は素直に「入りづら……」と感想を言う。こんな場所、少なくとも俺の来るべき場所ではない。
「えー、別にそんなことないでしょ。確かに男二人で入るなら少し勇気いるけど今は詩織さんいるし」
「そういう問題か……?」
「んー、私は別にこういう場所に男の子が来ても気にしないけど」
「……まあここまで来たし入るか」
正直納得はあまりしてないが、ここで争っても仕方ないのでしぶしぶと俺は中に入る。
「君って地味に繊細だよね。顔も体も繊細とはかけ離れた感じなのに」
詩織はまたクスクスと笑っている。
「ほっとけ!」
そうして俺達はそれぞれ適当に注文し、料理が来るのを待つことにした。
ちなみに俺は値段が一番安かったカップケーキを注文した。
太一はサラダ。
詩織は晩飯が入るのか心配になるぐらい大きなパンケーキを注文していた。
「各自が見事に自分の欲望に忠実な注文をしているな」
「こういうのって性格出るよねー」
太一はそう言って少し考えているような顔をする。
「草食と食いしん坊とケチ……って二人とも痛い痛い!」
「誰かケチだ」
「口は災いの元だよ」
俺と詩織は二人で太一の頭を軽くグリグリする。
「待ってでも二人とも隠す気ないじゃん!」
「分かってても黙っといてくれや」
「私は優平君に便乗しただけだよ」
「便乗しなくていいから!」
そうこう言っているうちに料理が来て、俺達は料理を食べることにした。
と、そこで突然後ろの席の女性が銃を構え、こちらに連射してきた。一瞬、辺りが静かになり、その後悲鳴と走る音で世界が埋め尽くされる。
俺は、危機一髪で死体の山で銃弾をガードすると、そのまま馬型の魔物の死体を突っ込ませる。
すると女性はその死体と周りのテーブルを風の魔法でふっ飛ばし、辺りは一気に白と茶色に染まる。
「嘘……せっかく食べようと思ったのに……」
詩織が凄くしょんぼりした表情でそう呟く。その横では、太一が諦めたような顔で「結局こうなるのか」と言いながらテーブルの下に隠れている。
「すまん、すぐに片付ける」
俺はそう言うと魔法で死体を合成し、巨大な一つの手を作る。そしてそのまま女性をその手で押しつぶそうとする。
だが、女性はそこそこ強いらしく、上手いこと死体の手を避け続け、こちらに風の刃を放ってくる。
俺は周りに散乱していたゴミで風の刃の軌道を見て、辺りに被害が出ないように死体で防ぐ。そして隣で詩織が氷の弾丸で女性の銃を破壊する。
「詩織、ナイス!」
俺はそのまま女性に死体の手を叩き込み、戦闘不能にさせる。
すると、辺りから拍手と歓喜の声が聞こえてきた。どうやら俺達のことを褒めているようだが、事の発端がそもそも俺達なので正直複雑な気分がする。
「あー、さっさとズラかるぞ」
気まずくなった俺は二人を無理矢理連れ出し、駅に向かう。
「あ、私のパンケーキ……」
詩織がなにかうわ言を言っているが無視。気の毒だがお前のパンケーキは既に地面に落ちている。
そうして俺達が駅に行くと、詩織の顔に笑顔が戻った。
「よし、駅ビルだーーーー!」
「……お前なんで急に元気になってんだよ」
「いやー、クヨクヨしてて仕方ないからね。切り替え大事だよ」
「なんか切り替えの早さここまで来ると異常者っぽく見えるね」
「いや、こいつは元々異常者だぞ」
良かった。二人の空気が明るくなってきた。こいつら元々が明るい分暗くなると余計どうしていいのか分からなくなるからな。
「さて、それじゃ早速洋服屋さんに行こうか」
「待て、なんでいきなり洋服屋に行くことになってる?」
「私と太一君で決めたんだけど?」
「いつの間に……まあいいけどよ」
できることなら俺にも発言権をくれ……
。
「というわけでいざ突撃ー!」
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