#5 外伝、 違和感に気づく
あれは幻だったのだろうか?
あれとはもちろん図書室での先輩との事。
美人さんだったなあ…。
しかも、銀色の髪や真紅の瞳…、
透き通るような肌…、芸能人でもあそこまでの
美人っていないだろうな…、
そう言えば名前も聞いてなかった。
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図書室から出た僕は特にする事もなく帰宅する事にした。
一応、今日から塾通い。
準備して行かないと。
遊んでばかりの日常生活を考えれば
両親が塾に行かせたいと思うのは分かる。
ゲームしか…しないし(笑)。
最寄りの平和駅から一駅、南平和駅へ。
ここ数年、人気講師の影響から生徒数爆増!
『今でしょハイスクール』に通う為だ。
改札を抜け、電車に乗る。
夕方には早い為かそんなには混んでいない。
空いていた座席に座り、ペットボトルのお茶を一口。
一息ついて何気なく車窓を眺める。
見慣れた駅前の景色が動き始め、体が揺れる。
入学初日から塾通いかあ…。
あんまり行きたくはないんだけどな…。
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塾の初日が終わった。たまたまだと思うが
同じ学校の生徒がいないのも良いものだ。
気楽で良い。うん。
帰途の電車に乗り、またまた空いていた座席に座り
ぼんやりと昼間の先輩の事を考える。
浮世離れしてて…、綺麗で…、夢を見てるんじゃないか
そのぐらいの美しさ…、ハーフの人とかかな?
また会いたいよなあ…、夢でも良いから。
いや、夢は嫌だな、また会いたい。
車窓は夜の遠影を切り取りながら、前から後ろへと、
架線を繋ぐ電柱がおよそ一秒ごとに姿を現し、
認識した時にはもう通り過ぎていく。
上を見やれば夜空なんて言えない程の漆黒に、
所々虫喰いのような白い粒が刻まれる。
もうすでに街中は過ぎ去ったのか、人家も見当たらず
車窓から漏れ出た車内の灯りが間近の地面に積った
一面の雪の白さを映す。離れれば離れる程、
空の色を受け入れるのか暗さを帯びた白さになり
無垢な雪を冷たいものへ、その印象を変えていく。
残り僅かのペットボトルのお茶を飲み干し、
大きな息を吐いた後、僕は思わず叫んでいた。
「入学式のあった4月に、なんで雪景色の中にいるんだよ!」
周りを見回すと、車内に誰も乗客はいない!
いや…、そもそも乗客はいたか?
在来線で一駅の区間なんて数分、
なんでこんなに時間がかかる!?
あらゆる物に違和感を感じ、
思わず座席から立ち上がった時!
ガコオォォォォン!!
何かに乗り上げたような激しい音と共に、
大きく車体が跳ねた!
その瞬間、僕の体も跳ね上げられ、社外へと投げ出されていた。
さて、ようやく異世界が口をあけます。
清宮くんの閑話をはさんで、7話から
本編を再開します。