#2 外伝、陰キャの僕は、ぼっち状態で部活探し
前話のあらすじ。
入学初日、僕は昼間から「やらないか?」。
寝技がある柔道部って…、ス、テ、キ!
ってワケでは無くてですね…。
急がないけど、部活どうするかな。
清宮は柔道部に仮入部をするようだ。
あの頭の良さそうな女の子は、英語部の門を叩いた。
僕はどうするか…。帰ってゲームしようかな。
それとも一つくらいは、部活を見ていくかな。
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僕達の通う中学校は、平和中学校といい、
五階建てで一年生の教室は五階にある。
周りの学校からは平中と呼ばれている。
市内の小学校や中学校は地震や洪水の時には、
避難所となる事になるのだが、何故かこの辺の
学校は低地にある事が多く、地震はともかく
大雨や洪水の時に大丈夫なんだろうかと思う。
周りの住宅地は少し高い所にあり、
下り坂の先に学校はある。
帰りは校門を出たらまず登り坂、面倒くさい。
これが三年続くのか…。
気を取り直して部活見学をしてみるか。
英語実習室の隣は…、図書室か。
ここを使う部活は図書部、
部活紹介のプリントによれば活動内容はズバリ読書で、
所属は5名。部活存続要件は5名以上だから
ギリギリの所だ。三年生が抜けたら大変だ。
僕自身はマンガ以外だと趣味に使える本くらいしか
興味が無い僕にはあまり縁のない部屋だな。
でも、教室から凄く近いのは良いな。
ハードな活動も無さそうだ。
とりあえず、中を覗いてみるか…、
僕は図書室の扉を開けた。
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「失礼しま…」退室の挨拶をしようとしたのであろう、
僕が開けた扉のすぐ前で一人の女子生徒が固まる。
「あっ…」思わず声が漏れた僕に視線が向く。
良く言えば整った顔立ちをした人形の様な、
悪く言えばほとんど感情の変化が浮かばない能面の様な
彼女の表情がわずかに驚きの色を浮かべる。
彼女は古木雅子。
僕と同じ小学校からの新入生だ。
彼女の父は、県の職員で結構な役職にある人らしい。
小学校の時に偉そうに振る舞う嫌な担任がいたが、
彼女の親子さんや彼女自身には割と遠慮していたのを
覚えている。また母親も教育熱心な所もあり、彼女は
学業優秀、ピアノやバイオリンと言った習い事を
こなして小さな頃から忙しい毎日を過ごしていた。
しかし、体はあまり丈夫ではなく、運動が苦手、
人間には長所ばかりでなく、わずかながらでも
短所もあるものだ、僕が彼女を見て学んだ事である。
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「失礼します」
改めて古木は退室の挨拶をして
僕の横を通り過ぎ部屋を後にする。
「ん」
奥から男性教師の軽い返事を声が聞こえ、
彼は奥の司書室に戻っていく。
先生から見て扉の外にいた僕はちょうど死角に
なっていたのであろう。
僕に気付かず奥の部屋に入る。
古木と入れ替わりに僕が入った時には
無人の図書室となっていた。
あの人が顧問なのかな…、一覧表で顧問名を確認すると
クラス担任の小黒先生だった。
そっか、担任の小黒先生なら急がなくても良いか…
まあ入部するとは限らないけどね。
プリントをたたんでポケットにしまって
何の気無しに周りを見渡す、平成どころか昭和からの
蔵書なのかな…、辞典のような大きさの小説もある。
あっ、奥の部屋の電気が消えた。
小黒先生が奥の司書室側から廊下へと出たのだろう、
扉が閉まった音がする。
僕も出ようかな、視線を手近な所に戻す。
そこに彼女はいた。
出入り口一番近くのテーブルに。
無人の図書室は無人ではなかったのだ。