閑話 半年前の出来事・終編 〜陰キャの僕が、人から距離をとる理由〜
今回の閑話、守田と言う人のエピソードは
ほとんどが僕の小学校時のエピソードが元になっています。
田村との繋がりやその後も同じで
名前を変えて書きました。
学校という閉塞感のあるコミュニティで、善悪の判断や
社会通念が未熟な時に普段ではあり得ないような
極端な流行や人間関係が生まれる事が
皆さんの小学校時代とかに生まれた事はないでしょうか?
ウチのクラスは生徒が29人。
その中で給食当番や掃除当番などを行うのに、何人かのグループ分けがされ基本的単位になるのが班だった。
一班から六班まで6つの班があり、各班定員は6人。
しかし、一人足りなくなるので六班は5人となっていた。
班は給食を食べる時にも集まる。
その5人しかいない六班に守田は所属しているのだが、今日は何やら様子が変だ。具体的にはその5人の位置関係。
四人は普通に向き合う形で2×2の形になっている。
残る守田はあからさまにそこから離れ、その席はさながら離れ小島のようだ。そこで誰とも話す事なく一人給食を食べている。
六班で一緒の守田とは『私達、親友』みたいなスタンスをとっていた田村は、守田に背を向けるような斜め向きで椅子に座り、積極的に話題を振りまきながら給食を食べている。
そうする事で守田を疎外させ、自身は守田とは違うアピールをしているのだろう。
「初めっから気に入らなかったのよねー、人のケータイの番号を沢山知ってるからってさぁ!」
田村がまくしたてる。
「でも、その知ってる番号をちょっとおだてて聞き出したら、後はもう利用価値無いよねー」
ゲラゲラと下品な笑い声をあげ、守田をこきおろし驕児のごとくはしゃぐ。
守田はその後ろ姿を憎らしげに睨みながらも何も言えないでいる。
しかし誰からも擁護の声は上がらず、守田は明らかにクラス中から無視状態、一部には敵視とも言える態度を取ってあある者もいる。
少なくとも僕の席に来て、番号を教えるとかいらないとか言ってた時点ではここまでではなかった。もしかすると、その時の事が原因なのかも知れない。散々上から目線な事言ってたし、価値が無いとまで言ったりもしていたからなあ…。
元々苦々しく思っていた人も多かったのだろう。
それで僕が先生に給食を持って行き、クラスに帰ってくるまでに決定的な何かがあったのだろうか。完全に班にもクラス中からも、そして守田の取り巻きだった銀魚のフン達からものけ者にされている。
お前らも似たようなもんだろ…、僕は心の中でため息をついた。
………。
……。
…。
それから一月ぐらいして守田は隣の小学校に転校していった。
引っ越しを伴うものではなく、住む所はそのままに本人の希望による転校らしい。完全に孤立化し無視されまくりだったのでそれもまたやむなしか。ある種、良い判断かも知れない。
新天地でやり直せるならそれも良いかも知れない。
さらに数日し月が変わった、守田の抜けたクラスが定着した頃には今度は田村が周りから距離を置かれ始めた。
歴史は繰り返す。
しかし、それは因果応報ともいえる。
驕り高ぶった守田に眉をひそめていたクラスのみんな、当然その取り巻きになり似たようなことをしていた者、守田の次はその取り巻きであり目立つ奴が的になる。
「みんな、自分がかわいいもんな…」
反守田、次は反田村にさえなっておけば、ある意味クラスでの大同団結である『反守田(反田村)連合軍』に所属するようなものだ。
そこにいる限り自分が攻撃される事はない。
確かにクラス全員が一枚岩になれるならそれが理想だ。
しかしなかなかそうはいかない。
だから一部を疎外し…、もっとも今回のその一部は『自業自得』ともいえるのだか…、その『大義名分』を口実に残る多数派が一枚岩となる。
「誰かを生贄にして成り立つ仲良しごっこだな…」
いけない、いけない。暗い事を考えると独り言が多くなる。
僕には少ないけど気の合う友達がいる。
だけど背を向けられたら…、ものすごく怖い。
なんだろうね…、ホントに信じられない友情ってさ…。
だから僕はクラスでも浮かない程度な言動をして、…と言ってもどうせ陰キャだから誰も僕なんか注目なんかしてないだろうけど、それでも孤立化はしたくない。
しかし、守田のようにとりわけ目立つ事をしなくても、人の近くにいれば短所や粗も目立つものだ。その粗が見つかり、いじめに発展する事もある。
それに守田や田村じゃないが、損得感情で近くにも貶めにも来るのなら僕は別にいらない。
清宮のような気心知れた仲間が少しいれば良い。
それ以外は有象無象。言葉悪いけど。
それが僕の人付き合い。陰キャの僕の処世術だ。
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都合によって利用し、裏切り、傷付ける…、
そんなモノが本当のトモダチなものか!
だから…、僕は今日も人から距離をおく。
人と近しくさえなければ粗も見えにくいだろうし、
最低限クラスで僕が浮かなければ良い。
クラス替えか、長くても高校に進学するまでの付き合いだ。
近くになんかにいなくても、
深くは付き合わなくても、
勉強も運動も目立つ物は無く、ルックスもスタイルも並以下で、
他人から見れば利用価値の無い僕は取るに足らない存在だ。
相互に当たり障りなく過ごせれば良い。
だから僕は距離をとる。
今までも、これからも。
………。
……。
…。
………そう思っていたのに。
ずっとずっと、そう思っていたのに!
先輩、あなたが目の前にあらわれた。