1本目・出会い
宜しくお願いします。
そこに見えてる景色それは本物ですか?自分が本物と思わないとただの偽物ですね!
ボクは誰だれ?
「…?ぁ…。」
声…
(ここ、どんな所?)
回りを見渡す。少年は少しだけ開けたところに居るらしい、正面には壁を挟んで通路が2本。右手には通路が1本。壁や天井は白く、緑の線が1本走っている。
左は水道…だろうか…若干距離が空いているが、水滴の音がする。
「み…ず。」
すかさず渇き悲鳴をあげる喉を癒しにかかる。
蛇口を捻ると勢い良く水が出る…と言うわけでは無いらしく、チョロチョロと小さな音を立て、それは落ちて行く。
水分の補給を終え、顔をあげる。そこにはヒビが這った鏡が、1枚寂しく掛けてあった。
(酷い顔…あれ?ボク…髪の毛白かったっけ?)
そう思ったのは単なる違和感だ、記憶はないが自分ではない気がしてしまう。
細い体、よれよれの白いタンクトップ、薄緑の緩いズボン…次々に違和感が出てきてしまい、きりがない。
最終的に気のせいだと、自分に言い聞かせることに少年は決めた。
さっきまで自分のいた場所に振り返る日が射し込んでいる。
窓だ
「まど?」
そこには窓があったのだ。埃が舞い上がり反射し、美しくさえ見えてしまう、が、しかし
今手元には窓を割ることができるものが無い、そこで少年は探索をすることを決める。
(食べ物も見つけなきゃ)
「よしっ…」
他の鏡が割れたのだろう鏡の欠片を拾い上げる。小さな欠片に映る自分は心なしか先程より、頼り強く見えた気がした。
右側の通路の探索を開始。
「ん?少し暗いな…」
先が見えないのは不安を掻き立てる。が、歩みを進める。
すると突然天井の蛍光灯が点滅し、光を放つ。
暗闇に入る前に明るくなったため、光はあまり眩しくない。
「たち…いり…きん…し?」
通路は直ぐ行き止まり…ではなく、立入禁止と書かれたドアに当たる。
「危ないのかな?」
少年は安全な所から探索をして行きたかったため、ここから先は進むのをしばらく断念することにした。
残る通路は二つだけ。
左の方の通路、この通路は直ぐそこに扉が有るのが見えている。
「あの部屋は危ないのかな…」
「きゅうけい…しつ?」
知識はある程度有るようで文字は読める。
休憩室。見たところ、椅子と机が散乱しているだけの部屋。
(何をする部屋かな?)
恐る恐る休憩室に入る。すると、一組の椅子と机、人がいることに気がついた。
「あの…?えっと…」
声を掛けたくてもなかなか言葉が出てこない。自分がとても緊張していることに少年は気付いていない。
「ん?人?こんにちは!少年!」
振り返るその顔は若く、そして可愛らしい黒髪の女の子…そう少女だ、やはり服はぶかぶか、少年と違うのは全体的に露出が少ない。
(髪が長い…女の子か)
「こ、んにちは…」
「ねぇ?どんな記憶があるの?」
「はえ?」
「私は自分の名前と季節に関する事」
「僕は、何にも無いんだ…自分の名前…自分の容姿…何も覚えてないんだ。」
もうすぐ暗くなりそうになっていることに少年は驚いた。窓から入ったのは朝日ではなく、夕陽だったのだ。
扉から微かに入っていた光が薄くなっていった。
元の場所に戻る事を少女に伝えると、少女は付いてくると言う。まだ話したいことが有るらしい。
「君さ…」