93.私とヴィラ
「私が解除したわょ~」
ヴィラは、私が描いた陣の光の中でふわふわ浮かびながら衝撃的なセリフを言った。
「どうして何もおっしゃってくれなかったんですか?!」
ベルさんが叫んでいる。
「私達はそんなお手紙で終わる存在でしたか?」
アリヴェルちゃんの声。
「ひどいよ!カエデ!」
シャル君が叫んでる。
皆が近づいてくる。
「来ないで!!」
いや!
いやだ!
聞きたくない!
「正直になれば?」
ヴィラの声が頭上から降る。
「どうしろっていうの?!」
「此処にいたって、何にも役にたたないし何もできない! 迷惑なだけじゃない!」
ヴィラを睨み怒鳴る。
「此所にいたら家族や友達に二度と会えない!」
会いたいよ。
「私は、私は、この世界でも、自分のいる世界でも中途半端だ!」
それなのにさ。変なんだよ。
「この世界から、この国の皆と離れるのも嫌だっ!」
勝手に連れてこられたのに、いつの間にか帰りたくなくなってるなんてバカだ私。
「楓」
ヴィラに名前を呼ばれ顔を上げる。
「今、少しの間だけ時間を止めた」
周りを見ると雨が止まっている。
後ろを見ると皆も動いていない。
不自然な空間。
「楓、最後に少し話そうか」
いつもの、ちゃかしているヴィラじゃない。
「私は、前に楓と会ってるよ」
そう言って微笑んだヴィラは別人のようだった。




