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異世界の色  作者: 波間柏ひかた


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92/94

92.あと2日…だけど

他の人もそうなのかもしれないけれど、自分が好かれているか、嫌われているかに私は敏感な気がする。


母子家庭となり、お母さんの顔色をいつもうかがっていたからかなと今は思う。仕事から帰ってくるお母さんを観察し、今日は機嫌がそこまで悪くないとか。


好き嫌いはどうしてもある。

30人いて1人本当に仲良くできれば、嬉しいなくらいに私は思っている。


でもなー聞いておいてなんだけど、やっぱりキライという言葉は心にくるわ~。


「どうせ、温室育ちで表面だけの人間でおめでたい奴だからですよね?…あとどうしてもっと早く、あの女の子がいなくなってしまう前に、戦争が始まる前にこの世界に来なかったのかよ、ってとこですかね。まぁ後半は私だってそう思います正直」


こちらを見ないラウさんだけど、苦笑しているのがわかる。


「カエデちゃんてさ~なんで自分で自分の首を絞めようとするのか不思議。死んだのは、妹だよ」


やっぱり身内だった。


「薬があれば助かったけど、戦争中で何もかもが不足していた」


しょうがないと呟きながらも苦しそうな声。


「俺は…前線にいて間に合わなかった」


こんな話をさせてるのは私。


「この国は、獣族少ないだろ?戦で使えるから沢山駆り出され皆死んだ」


ため息をつき私を見る目は意外にも穏やかだ。


「カエデちゃんのことは、キライだけど嫌いじゃないよ。カエデちゃんの世界なら妹は長く生きられただろうな」

「ごめんなさい」

「何が?」

「思い出させてごめんなさい」


好奇心でこの人を傷つけた。神様の次に強いなんて何の役にもたたない。


まして、私自身は何も持っていない。


暖かい。

頭を撫でられた。


「いつ帰る?もうきっと間近だろ?」


何でこの人は気づくんだろう?

そして誤魔化しも効かない。


「…明日」

「だいぶ急だな~」

「奴は?」


ルークさんだよね。


「知ってる」

「アイツはバカだな」

「バカじゃないです」

「ふっ、カエデちゃんもバカだな」


頭はいいとは言えないので、否定できない。


「カエデはさ~優等生すぎんだよ」


意味わかんないよ。

呼び捨てだし。


「もっと我が儘でいいと思うよ、お兄さんは」


誰かにもそんな事、言われたな。

さてと、と言い立ち上がるラウさん。


「寒いし入ろっか」

「はい。フブッ」


前を歩いていたラウさんが、いきなり立ち止まったので鼻をラウさんの背中にぶつけた。


「リラ」

「え?」


ラウさんは、顔を私に半分向けた。


「リラ。リラージュが妹の名前。花の名前なんだ」


私は、また歩き出したラウさんの背中に言った。


「私の短所は、臓器は覚えられるのに人の名前は覚えられないんです。でも、リラちゃんの名前も顔も一生忘れませんから」

「うん、有り難う」


ラウさんの顔は見えないけど、きっと穏やかな表情をしている。


そんな気がした。


その夜。

私は、淡い光の中手紙を書いていた。まだ習っている途中の為、電報みたいになっちゃう。


「は~」


なんとか書き終わりベッドに入ったけど。

寝れない。


…もーいいか。


残り1日も2日も同じかも。

ベッドから起き上がりクローゼットを開けあさってみれば、それは隅にあった。私は、この世界に来たときに着ていたスーツに着替えた。なんだか馴染まないと感じる自分がいる。


そんな思考を中断させた。


音や気配でばれるなら、転移だ。

居間から出れる庭に転移した。


外は雨が降っていて音が消えてちょうどいい。

念のため部屋に入れないよう力を扉に放つ。外の護衛の人が感じないように感度はゼロと念じる。


素足で冷たく、雨が体を濡らしていくけど無視して舞い始めた。私は、お披露目で舞ったものと同じ動きと言葉を口ずさむ。棒はないけど、できる気がした。最後の円を膝をつき両手で結ぶ。


直後描いた陣が光り暗闇の中に金の光の柱が空へ突き抜け。


ヴィラが現れた。


「楓」


ヴィラが私の名前を呼ぶ。


「カエデ!」


後ろから声がした。

振り向くと居間の庭に出る扉は開いていて。そこにはルークさんだけでなくシャル君やラウさん、マリーさん達までいた。


なぜ?

防御は完璧なはずだった。

全ての人を拒否する防御をかけたのに。


こないで。

見たくない。

聞きたくない。


なぜいるの?





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