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異世界の色  作者: 波間柏ひかた


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91.あと2日 ~自分勝手~

ガタガタ。

今日は朝から杯もどきに力を注ぐため馬車で神殿に向かっている。

今は、馬車の中で前にはルークさんとラウさん。

シャル君は急用でお父さんに呼ばれていない。

すぐにではないけれど、爵位を継ぐ準備が始まっているらしい。


そういえば。


「ルークさんは、ローズ嬢と婚約していたんですよね?」

「・・誰から聞いた?」

「少女趣味なんだよねーフベッ!」

よせばいいのに余計な言葉を発したラウさんが、ルークさんに頭に肘鉄をくらわさられた。

誰だっけ?

あまり思い出したくない辛子オジサン、ダーキッド公爵だ。

「あ~確か初めて夜会に出たときです。」

でも、ラウさんが言うように年下が好きなのかな?

かなり離れてるように見えるけど。

「また変な想像しているようだが、俺はそういう趣味はない。」

ブスッと答えるルークさん。

「ローズ嬢って15歳くらいだっけ?あと2年で成人じゃん~。」

「護衛をした時に、なつかれただけだ。」

「だいたい直ぐ断った。」

「よく断れたよね~権力使いまくったでしょ。」

そうなの?

「カエデちゃんは、ピンとこないかもしれないけど、上位の申し出を下位が断るのは思ったより難しいよ~。

下っていっても副隊長殿の家柄はかなりいいけどね。」

「だけど相手が公爵だしね~。」

貴族って面倒そうだなぁ。


「あれ、それにシャル坊や何か込めた?あと他の気配もする。」

ラウさんが私の皆からもらったブレスレットを指さす。

「えっ?そんな事わかるんですか?」

確かに昨日、振られても見守ってますみたいな事を言われて黄色の光を石にいれてくれた。

それを見たマリーさん達が私達も少しはできますのよって力をいれてくれたのだ。

そういえば、何の効果があるのか聞いてないなぁ。

「う~ん、知ってる奴の気配だと、それぞれ違うからわかるよ~。」

「へ~。」

面白いなぁ。



「使者殿のおかげで治癒の効果がもしかしたら以前よりも上がったかもしれません。」

杯もどきに力を注ぎ終わり帰りがけに神官長さんからそう言われた。

2日に1回の杯もどきへ力を注ぐのも今日が最後だった。

神官長さんと会うのもこれで最後かな。

見納めかと思うとじっくり、その美しい顔を観察した。

神官長さんは相変わらず穏やかな優しい空気をまとっている。


「よく考えればよい道がありますよ。」

・・見透かされているようなセリフだ。


「・・はい。」

それしか言えない。



お城に戻り今日はいつもの庭でお昼ご飯を食べる事にした。

石のベンチには、お茶のカップを片手にラウさんが寛いでいる。

「そういえば、煩いダートに力の残量が今より詳しくわかる新しいの作ってもらったの?」

「いえ、この今の色が気に入っているから、これでいいかなと思って。」


だってもう必要ないから。


「ふ~ん。」


あぁ。

この人も察知能力高いから何か気づいているんだろうな。

そういえば、まだ聞いてなかったけど、言うことでもないしなぁ。

でも話す時間もあまりない。

ご飯を食べ終わりお茶を飲みながら空を見上げる。

今日は曇っている。

雨も降らないと困るよね。

「前なんですけど、私、夢で色々見たんです。」

「何を~?」

「多分ガインとの戦の時の映像で沢山の人が地面を埋め尽くしていって、映像は、音だけでなく匂いも感じて自分がその場にいる状態でした。」

「甲冑であってますか?被っていてあまりよく見えなかったけど・・シャル君やルークさん、ラウさんもいました。」

あの時は、とにかく匂いと場所に圧倒されて分からなかったけど、確かにいた。

無表情なのに目は爛々として怖かった。

ただ獲物を狩るだけ。

狩るという表現が一番近い気がする。

次を話せという無言の促しがきたので話を続ける。

「お葬式見ました。」

「多分ラウさんにとても近い人の。」

「何故今そんな話を?」

まあそうだよね。

「なんとなく。」

自分勝手なだけだ。

自分が気になる事は全て吐き出しすっきりしたいだけ。

私とラウさんは、ぼんやり雲を眺めている。

「あとは?この際何でもいっちゃいなよ~。」

「あとですか?」


「ラウさんは、私の事大っ嫌いですよね?」


「うん、キライ。」








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